セカンドインパクト愛護週間
月曜日
一年中真夏の第三新東京市は今日も快晴。目を焼くような日差しが降り注ぐ。
昨日も使徒の猛攻をどーにかこーにか退けたエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジは本業である学校で授業を受けていた。
眠っていることを受けていると言えるのならばだが。
(……うっ、父さん……前から言おうと思ってたけど……そのメガネ、マフィアみたいだよ……)
なんの夢を見ているのかうなされているシンジ。
「……そのとき、南極に巨大な隕石が落下し、人類に滅亡の危機が訪れました。
これをセカンドインパクトと言います」
老教師が遠い目をして思い出話モードに突入した。
「なんや、またセカンドインパクト物語かいな。あのセンセも飽きんやっちゃのう」
「まあそう言うなよトウジ。授業がつぶれてくれれば、その分写真の売り上げが伸びるってもんさ」
「……おまえこんな時にも商売しとるんか?」
「フォトショップ・ケンスケは年中無休、24時間営業だからね」
「おまえはコンビニかいな………ま、せいぜいがんばりや」
トウジは欠伸をすると、窓の外を見やった。青い空。
「そのころ私は松代に住んでいましてね……あの時代はまさに地獄でした……」
年齢を重ねると、昨日のことよりも昔の記憶のほうが鮮明になるという。老教師はまさにその典型であった。
しかし。
さらに年齢を重ねると、記憶に混乱が生じることもあるのだ。
「ですがみなさん!」
バンっ!
老教師の手が教卓を打ち据え、クラス中の視線が前方に集中する。
「セカンドインパクトが巨大隕石というのは政府が捏造した大ウソなのです!!」
突如ギラギラと輝き出した老教師の相貌には、ただならぬ気迫が感じられる。
「みなさんに真実を教えましょう!」
両腕を大きく開く。
「セカンドインパクトは人災なのです!!」
教室は静まり返った。
老教師はせきばらいをひとつすると、それまでと打って変わって静かにかたり始めた。
「それは199X年……世界は核戦争によって絶滅寸前まで追い込まれました。
残された人類も、生き残るため水や食料を確保するのに大変な苦労を強いられていました。
これがそう、本当のセカンドインパクトなのです」
「なんや、今日はいつもと調子が違うみたいやな」
「ああ……でも、どこかで聞いたような話だな」
「やがて、世界には暴力の支配が広がり、未来への希望は失われてしまったかのように見えました。
そこに現れたのが胸に7つの傷を持つ男です」
「おおっ、わかったで!」
「そうか……一子相伝の暗殺拳か」
「そして男は言い放ちました。
『悪党に名乗る名は無い!』
華麗に宙に舞う男の必殺キックが悪漢を叩きのめしていきます。
ついにはその場の全員が虫の息で倒れていました。
7つの傷の男は全員が戦えなくなったと見るや、その場を去ろうとしました。
しかし、まだ敵の中に動けるものが残っていたのです!
後ろを見せた男に、金棒が振り下ろされます!
バシッ!
なんと7つの傷の男は指一本で、鋼鉄の金棒を受け止めました! 驚愕する悪党。
そして男は静かに告げました
『お前はもう、死んでいる』
次の瞬間、悪党の頭は奇妙に変形し、やがて破裂してしまったのです!」
「どーでもええのやけど、今日はセンセえらい気張ってはるなあ」
「ただしちょっと設定の詰めが甘いね。199X年だったらセカンドインパクト前じゃないか。
それじゃあ7つの傷の男が出てきても意味がないね」
「それを言っちゃあおしまいやでノビタ君」
「……う〜ん……あれ? いけない、僕寝ちゃってたみたいだ……」
「―――謎の男は遥か天を指し示して言いました!
『あの北斗七星の側に輝く星が見えるか!?』」
「ええっ!? ……い、いえ、見えません!」
「『フッ……命拾いしたな……! だが! 次に会ったときが貴様の死ぬときだ!!』」
「そんなっ! 居眠りくらいでっ!?」
火曜日
一年中真夏の第三新東京市は今日も快晴。目を焼くような日差しが降り注ぐ。
今日もエヴァンゲリオン零号機パイロット、綾波レイは本業なのかどうか分からない授業を受けていた。
ぼんやりと窓の外を眺めていることが受けていることになるのならばだが。
(……らーめん……)
朝から何も食べていないので空腹に耐えているレイ。
「……そのとき、南極に巨大な隕石が落下し、人類に滅亡の危機が訪れました。
これをセカンドインパクトと言います」
老教師が遠い目をして思い出話モードに突入した。
「なんや、またいつもどおりかいな。せっかく昨日は笑かしてくれたのにのう」
「まあそう言うなよトウジ。授業がつぶれてくれれば、その分ビデオの売り上げが伸びるってもんさ」
「……おまえ写真以外にも手ぇ出しとるんか?」
「ビデオショップ・ケンスケは年中無休、24時間営業だからね」
「ビデオにゃ性格が映るんとちゃうか?………ま、せいぜいがんばりや」
トウジは欠伸をすると、窓の外を見やった。青い空。
「そのころ私は松代に住んでいましてね……あの時代はまさに地獄でした……」
年齢を重ねると、昨日のことよりも昔の記憶のほうが鮮明になるという。老教師はまさにその典型であった。
しかし。
さらに年齢を重ねると、記憶に混乱が生じることもあるのだ。
「ですがみなさん!」
バンっ!
老教師の手が教卓を打ち据え、クラス中の視線が前方に集中する。
「セカンドインパクトが巨大隕石というのは政府が捏造したデタラメなのです!!」
突如ギラギラと輝き出した老教師の相貌には、ただならぬ気迫が感じられる。
「みなさんに真実を教えましょう!」
両腕を大きく開く。
「セカンドインパクトは侵略なのです!!」
教室は静まり返った。
老教師はせきばらいをひとつすると、それまでと打って変わって静かにかたり始めた。
「人類文明がきらびやかな発展を遂げていた世紀末。
しかし、その繁栄を快く思わない異種族が永き眠りから目覚めました。
それはデーモン族と呼ばれる悪魔達でした。
彼らの圧倒的な力はたちまち人類をねじ伏せて地上の覇者となるべく暴れまわり、それによって人類の半数が失われました。
それがそう、本当のセカンドインパクトなのです!」
「お、今日も何か始まりよったみたいやな」
「へえ、今日のはなかなかおどろおどろしいじゃないか」
「しかし、絶望的と思われた人類にも救世主があらわれます。
それは、悪魔と人間が合体した究極の生命体だったのです!」
「わかった! 変身する時にめちゃめちゃカッコ悪く叫ぶやっちゃな」
「誰にも正体を知られちゃいけないアレか」
「デーモン族と悪魔人間達は、果てしない戦いを繰り広げていきました。
『ふんっ愚かな悪魔人間よ! なぜに人類などに庇護をかけるのだ!』
『オレは……オレは……人間だからだっ!』
そして彼は大きく羽ばたいて宙に飛び上がります!
『くらぇっ! 悪魔イヤーーーーーーーッ!!!』
おそるべし悪魔イヤー! その能力はどんな小さな音も些細漏らさず聞き取ることが可能なのです!」
「違うやろ。それは攻撃できへんっちゅうねん」
「そこはせめてアローとか使うべきだろ。欲を言えばカッターかな」
「『ぬぅぅっ、なんて強い力だっ……これが悪魔と人間が融合した力なのかっ!?』
『オレは決して負けない! 人類の未来のために!』
彼は傷つきながらも最後の力を振り絞って叫びます。
『とどめだっ!! 悪魔イヤーーーーーーーーーーーーッ!!!!』」
「だからそれでどうやって敵を倒すんやっ!」
「落ち着けよトウジ、あんまり騒ぐと委員長に睨まれるぞ」
ガタンっ。
前触れもなくレイが立ち上がり、ぼそりと呟いた。
「……早退します。」
「『何っ!? 逃げるのかっ! ……だが、その傷ついた身体でどこへ行くつもりだ!!』」
「……らーめん……食べに……。」
「……っていうか悪魔イヤーなのに全然聞こえてないじゃないか」
水曜日
一年中うだるような暑さの第三新東京市は今日も日本晴れ。目を焼くような日差しが降り注ぐ。
今日もエヴァンゲリオン弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレーはとっくに課程を修了したはずの授業を受けていた。
日本語が読めずに四苦八苦していることを受けていると言えるのならばだが。
(……なんでこのアタシがこんな程度の低いことやり直さなきゃいけないのよ!)
苛立ちはつのるばかりで不機嫌も最高潮のアスカ。
「……そのとき、南極に巨大な隕石が落下し、人類に滅亡の危機が訪れました。
これをセカンドインパクトと言います」
老教師が遠い目をして思い出話モードに突入した。
「なんや、どうして振り出しにもどるんやろな。せっかくこのところ面白くなってきたところやのになぁ」
「まあそう言うなよトウジ。授業がつぶれてくれれば、その分トレカの売り上げが伸びるってもんさ」
「……おまえ版権商売にも手ぇ出しとるんか?」
「カードショップ・ケンスケは年中無休、24時間営業だからね」
「厚紙みたいな粗悪品売っとんのと違うか?………ま、せいぜいがんばりや」
トウジは欠伸をすると、窓の外を見やった。どこまでも青い空。
「そのころ私は松代に住んでいましてね……あの時代はまさに地獄でした……」
年齢を重ねると、昨日のことよりも昔の記憶のほうが鮮明になるという。老教師はまさにその典型であった。
しかし。
さらに年齢を重ねると、記憶に混乱が生じることが結構あるのだ。
「ですがみなさん!」
バンっ!
老教師の手が教卓を打ち据え、クラス中の視線が前方に集中する。
「セカンドインパクトが巨大隕石というのは政府が作り上げた幻想なのです!!」
突如ギラギラと輝き出した老教師の相貌には、ただならぬ気迫が感じられる。
「みなさんに真実を教えましょう!」
両腕を大きく開く。
「セカンドインパクトは小宇宙なのです!!」
教室は静まり返った。
老教師はせきばらいをひとつすると、それまでと打って変わって静かにかたり始めた。
「古来、戦の女神を護るため、戦うものたちがいました。
彼ら聖なる闘士は武器を嫌う女神の厳命に従い、己が拳を鍛え、それのみによって血路を切り開いていました。
女神の支配は永遠とも思われましたが、遂に聖なる闘士に裏切り者が現れたのです。
それがそう、本当のセカンドインパクトなのです!」
「おいおい、とうとう人類の半数滅ぼさなくなりよったで」
「裏切り者の数人くらいで人類が滅亡してもいやだけどな」
「決戦の火蓋は切って落とされました。
体内に秘められた強大な力を解放し、闘士の拳は燃え上がります!
『吹き飛べっ! ギャラクティカ・ペガサス!!』
内なる宇宙の爆発が、裏切り者悪の黄金闘士に襲い掛かります!
『言ったはずだ! 同じ技は二度と通じないと!!』」
「通じないゆう前に名前間違っとるやないかい」
「他のものも混じってるみたいだな……登場人物は同じに見えるけどな」
「『貴様らごとき雑魚がいくら寄り集まろうと、
我ら黄金闘士の足元にも及ばぬわ!』
それでも青銅闘士たちは全身の細胞の一欠けらにまで
小宇宙を燃やし、不屈の闘志で立ちあがります。
『なにっ!? まだ立ちあがる力があると言うのかっ!?』」
ガタンっ。
ついに痺れを切らしてアスカが立ち上がり、力の限り叫んだ。
「あぁもうっ、うるさいわねっ! なんなのよこの老いぼれ教師はっ!?」
「『しかし何度立ちあがろうと無駄だ!
貴様はここで朽ち果てる運命なのだからなっ!!』」
「なっ……なっ、なぁぁんですってぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
それが教師が生徒に向かって言う言葉なのっ!?」
「『あと3時間……その間に我ら全員を退け教皇を倒さなければ
あの女は死ぬ事になるのだっっ!!』」
「よっ、よくもそこまで言ってくれたわねっ! その勝負受けて立つわ!!
3時間以内、いや1分であんたを倒してやるわよっ!!!」
「やばいでっ! 誰か惣流を止めるんや〜っ!」
「と言いながら一緒に先生に殴りかかるお前は輝いてるよ、トウジ」
木曜日
年がら年中意識も途切れそうな暑さの第三新東京市は今日も晴れすぎ。目を焼くような日差しが降り注ぐ。
今日もエヴァンゲリオン参号機パイロット……に今日選ばれてしまったトウジは退屈で仕方ない授業を受けていた。
昼まで待てずに早々と弁当を広げていることが受けていると言えるのならばだが。
(くぅ〜〜っ! やっぱりメシこそ学校最大の愉しみやなっ!)
眼前に広がるおかずの地平線をながめご満悦のトウジ。
「……そのとき、南極に巨大な隕石が落下し、人類に滅亡の危機が訪れました。
これをセカンドインパクトと言います」
老教師が遠い目をして思い出話モードに突入した。
「まあ今日は何も言わんといてやろか。ワシの幸せタイムを邪魔せんでくれればそれでええ」
「まあそう言うなよトウジ。授業がつぶれてくれれば、その分フィギュアの売り上げが伸びるってもんさ」
「……おまえとうとう平面以外にも手ぇ出しとるんか?」
「フィギュアショップ・ケンスケは年中無休、24時間営業だからね」
「1分の1綾波のふくらはぎ〜〜とか作っとんのか?………ま、せいぜいがんばりや」
トウジはよだれを拭くと、弁当を見やった。どこまでも食い意地のはったやつ。
「そのころ私は松代に住んでいましてね……あの時代はまさに地獄でした……」
年齢を重ねると、昨日のことよりも昔の記憶のほうが鮮明になるという。老教師はまさにその典型であった。
しかし。
さらに年齢を重ねると、記憶に混乱が生じることが頻繁にあるのだ。
「ですがみなさん!」
バンっ!
老教師の手が教卓を打ち据え、クラス中の視線が前方に集中する。
「セカンドインパクトが巨大隕石というのは政府が捏造したフェイクなのです!!」
突如ギラギラと輝き出した老教師の相貌には、ただならぬ気迫が感じられる。
「みなさんに真実を教えましょう!」
両腕を大きく開く。
「セカンドインパクトは戦争なのです!!」
教室は静まり返った。
老教師はせきばらいをひとつすると、それまでと打って変わって静かにかたり始めた。
「それは宇宙世紀0079年1月3日。
ゼーレはネルフに対し宣戦布告と同時に地球軌道上の連合艦隊に攻撃をしかけました。
そして翌4日、ゼーレはスペースコロニーを地球に落とす「サハクィエル作戦」を開始、
コロニーは地球に向かって自由落下を始めました。
そして落下したコロニーは人類の半数を死滅させる大災害となったのです。
それがそう、本当のセカンドインパクトなのです!」
「おいおい、なんで一介の老教師がゼーレなんて知ってるんだよ?」
「いちいち細かいこと言うなや。メシが不味くなるやないか」
「しかし、本当の戦いはそれからでした。
次々に襲い来るゼーレの機動兵器に苦戦するネルフは後退を余儀なくされていきます。
ですが、明けない夜がないように、そこに登場する救世主がいました。
ネルフ期待の新型、紫のモビルセーブツ、EV−78初号機です!」
「なにぃぃぃっ!? 混信こそしてるけど、ありゃ間違い無く機密情報だぞ!」
「座れやケンスケ! ワシが早弁しとるのがバレるやろが」
「いやっこれが座っていられるかっ! これは冒涜だよ! 数十年と言うロボットアニメの歴史をやつは踏みにじっているんだ!!」
「ついにライバルは戦場で相対しました。
『あれがネルフの新型か! ……なるほど、いい動きだ!』
『……武器はドコだ、武器はドコだ、武器はドコだ!』
なんと初号機のパイロットはわずか14歳の子供ではありませんか!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!! もう我慢ならん! 止めるなトウジ、オレはやるぜ!!」
「ああっ待たんかケンスケ! そ、それは犯罪やぞっ!!」
「少年の操るプログサーベルが、敵機の横腹を薙ぎました!
『ぐわぁっ! なんというスピードだ!』」
「くそっ! 黙れ黙れ黙れ黙れっっ!!」
「やめるんやっ! もうそれで充分やろっ!」
「……はぁっ、はぁっ……お、思い知ったかっ!」
「深手を負った敵機は、ひとまず退却することにしました。
離れていた仲間が応援にやってきました。
『すごい破損状況だ……誰にやられた!?』
『白いヤツにやられた!!』」
「すごい……ビクともしてない」
「さすがセカンドインパクト前の人間は、丈夫やのう……」
金曜日
いつまでもどこまでも真夏の第三新東京市も今日は涙色。どんよりと暗い雲が立ちこめて雨が降り注ぐ。
なんとなく死海文書の記述より早く来てしまったエヴァンゲリオン何号機だろう……のパイロット、
渚カヲルは今日転校してきて初めての授業を受けていた。
シンジを口説いていることが受けていると言えるのならばだが。
「正直に言うとね。僕は使徒なんだよ……そして、僕が仕える神様は、君さ、シンジ君」
耳まで真っ赤に染めてうつむくシンジ。
「……そのとき、南極に巨大な隕石が落下し、人類に滅亡の危機が訪れました。
これをセカンドインパクトと言います」
老教師が遠い目をして思い出話モードに突入した。
「ここまで毎日やと、そろそろ帰りたなってきたわ。っちゅうかワシそろそろ参号機の起動実験にいかなあかんし」
「まあそう言うなよトウジ。授業がつぶれてくれれば、その分ゲームの売り上げが伸びるってもんさ」
「……おまえそんなものまで手広く扱っとるんか?」
「ゲームショップ・ケンスケは年中無休、24時間営業、18歳未満お断りだからね」
「売っとるおまえはいくつなんやっちゅーねん………ま、あとでワシにもいくつか回せや」
トウジは欠伸をすると、窓の外を見やった。黒い空。
「そのころ私は松代に住んでいましてね……あの時代はまさに地獄でした……」
年齢を重ねると、昨日のことよりも昔の記憶のほうが鮮明になるという。老教師はまさにその典型であった。
しかし。
さらに年齢を重ねると、間違い無く記憶に混乱が生じるのだ。
「ですがみなさん!」
バンっ!
老教師の手が教卓を打ち据え、クラス中の視線が前方に集中する。
「セカンドインパクトが巨大隕石というのは政府が提案したひとつの可能性なのです!!」
突如ギラギラと輝き出した老教師の相貌には、ただならぬ気迫が感じられる。
「みなさんに真実を教えましょう!」
両腕を大きく開く。
「セカンドインパクトは魔球なのです!!」
教室は静まり返った。
老教師はせきばらいをひとつすると、それまでと打って変わって静かにかたり始めた。
「幼い頃より父の夢を果たす義務を背負わされ、輝けるネルフの星となるために
訓練させられてきた少年は、ついに野望の入り口であるネルフ軍に入団しました。
『父さん……僕はやるよ……父さんが果たせなかった夢……
……ネルフの星をこの手でつかんでみせる!』」
「おおっ遂に根性で燃えるボールが登場やな!」
「……愛の力で動くロボとどっちが異様な設定なんだろうな?」
「そして試合は始まりました。
バッターボックスに立つ相手は幾度と無く競い合ってきた永遠のライバルです。
彼を打ち倒さずして、ネルフ軍に勝利はありません。
『……いくよ…! 第エンジェルボール12号っ!!』
少年の手から放たれた白球はみるみるうちに白黒の縞模様に変化しました!」
「ふふっ、ガラスのように繊細だね君の心は……、好意に値するよ……でも、僕は君とひとつになるためなら
心の壁だって打ち砕いて見せるさ」
「ガキィッ!!
ライバルの美少年のバットは、白黒のボールには目もくれず、
地面すれすれを飛翔してきた本体……鋭い回転によって薄く変形し、
まるで影のように目くらましされていたそれを捕らえました!
『そ、そんなっ! 第エンジェルボール12号がっ!』
苦心に苦心を重ねて織り上げた魔球、第エンジェルボール12号は
無残にも打ち砕かれました。
そして、マウンドにがっくりと膝をついた少年は、大きな傷を抱えることになりました。
それがそう、本当のセカンドインパクトなのです!!」
ガタンっ。
ついに堪忍袋の尾が切れたのか、渚カヲルは立ちあがった。
「さっきから少し騒がしいね……静かにしてもらうとしようか」
「おい……あいつ何をする気なんや」
「俺には分かるぞ……昨日同じ考えを抱いたからな。あれは……ハンターの目だ」
「まっ……まさかあいつも!」
「『僕は、もうだめだ……ネルフの星になんてなれないよ!!』
その中継を見ながら、少年の父親は誰にともなく口を開きました。
『……まだ投げる気があるなら早くしろ。でなければ帰れ!』
少年の耳にその言葉が届くはずがありません……しかし!ぐあっっ!!」
「……これで静かになったね、ふふふふ」
「やり……おったで……」
「さすがの俺でも、あそこまでの勇気は、持ち合わせてなかったな……」
「さあシンジ君、これで僕たちのスイートタイムを邪魔するものは何もない……
カンバセーションを愉しもうじゃないか……そうだね、ひとつ面白い話しを教えてあげるよ。
昔、セカンドインパクトというのがあってね……」
「お前もかいっ!!!」
ご意見・ご感想は三笠どらまで。
戻る