『エヴァンゲリオン……見るべくもない、というわけでもなさそうだね』



……度重なる失敗……許されるものではない……



『では極東支部長に裁きを? ずっと“空席”なのにそれは無理な相談だよ』



……ならば潰せ…!……我らが支配者に勝利を捧げよ……



『丁度「空」から面白い情報が入ったよ。チャンスかも知れないね』



……闇に乗じる、か……期待してよいのだな?……



 
 







 
 
 





 それは良く晴れた日曜の朝の事だった。
 パン、パン、とベランダから布団を叩く音が聞こえてくる。
 Tシャツ・短パンのラフなスタイルで冷蔵庫から、ガラスの麦茶ポットとケーキ屋さんのロゴが入った白い箱を取り出したアスカが、はしたない事におしりで、ぃよっ、とドアを閉めた。
 テーブルの上の良く冷やしたコップに麦茶を注ぎ、ガラスポットを置くと、鼻歌を漏らしながら箱を開く。

「……ん?」

 そこにあるべき三角の、甘い、せっかくの休日を充実した一日にする為に昨夜誘惑と戦って戦って辛くも勝利して保存しておいた、シンジとミサトが美味しそうに平らげるのを横目に耐えて耐えて守り抜いた、アレが無い。
 替わりに紙切れが一枚。
 太いフェルトペンの字でこう書いてある。

『ゴメン!今度返す!   意思の弱いミサト』

 ぐしゃっ、と書き置きを握りつぶし、眉毛をひくひくさせながら、今ごろネルフ本部に居るであろう家主の行動パターンを読めなかった自分の心に反省を促すアスカ。
 きっと、アスカたちが寝てから、おつまみがなくなって口さびしくなって、冷蔵庫を開けて食べてしまったに違いない。
 雑食なのは知っていたが、まさかケーキをつまみにビールが飲める人間だったとは、とまた一つ学習したアスカは、くいっと麦茶を一口飲むとグラスをダンっと苛立ち混じりな音を立ててテーブルに置いた。波が立ち飛沫がこぼれる。
 そして時計を眺め、お昼まで2時間と言う半端な時間に、きゅぅぅと縮こまってケーキを要求する胃をどうやって静めようかと考える。

「……うん、ホットケーキでも作らせよっと」

 作ろう、でないところが支配者階級である。
 善は急げとベランダに出ると、シンジが洗濯物を干しているところだった。

「ん、どうかしたの?」
「ホットケーキ」

 前置きも説明も何にも無し。ただの名詞を言い放つ。

「あ、ちょっと待って。これ干しちゃうから。バターかマーガリンあるか、冷蔵庫見てくれる?」

 なんで伝わるのか、そう答えたシンジは、洗濯バサミで手にしていたタオルを挟んだ。そして足元のカゴから洗濯ネットを取ったシンジは、チャックをちーーーと開き、中のモノを取り出そうと手を入れる。

「っ!」

 その瞬間、目を見開いたアスカはシンジの手から洗濯ネットを奪取すると、それをシンジに見せないように後ろ手に隠した。

「あ、あんたバカぁ!? 何勝手に人のモノ干そうとしてんのよ!」
「何って……あっ」

 一枚だけ手に残った布を広げて見たシンジは、それがレース飾りの可愛い下着である事に気づいて赤面した。
 バシッとアスカの手がそれも攫う。

「あたしは男に下着洗わせるようなデリカシーの無い誰かとは違うのっ! 今後これを勝手に触ったら死刑よ!」
「ご、ごめん……」
「それと今見たのも今すぐ忘れなさいよ。あたしが着てるところなんて想像するんじゃないわよっ!」
「えっ」

 言われなければ気づかなかったのだが、釘を妄想のツボに刺されてしまったシンジは、さらに血の気を増してうつむいて挙動不審になってしまう。

「バ、バカっ! するなって言ってるでしょっ! もうっ、ここはもういいからあんたはさっさとホットケーキ作りなさいよ!」

 心なし墓穴色に上気したアスカの怒声に蹴り飛ばされてキッチンに逃げたシンジは、テーブルに麦茶を見つけてそれを口にし、呼吸を整えながら椅子にへたりこんだ。

「あーびっくりした……そっか、だからミサトさんのしか見かけなかったのかぁ」

 動悸ドキドキ鳴り響く胸を無意識に押さえ、そう呟きながら、ホットケーキの材料なんてあったかな?と記憶を辿るシンジ。だが、まぁホットケーキミックスは常備していないので、当然無い、と結論が出る。
 仕方ないので買いに行こうと、立ち上がったその時。

 ―――ピンポーン。とチャイムが鳴った。

「あ、この時間だとケンスケかな?」

 時計を眺めながら、毎週ペンペンを『演習(?)』に誘いにくる友人の顔を思い出す。……そしてここ最近の葛城ムーン関連の出来事を振り返り、彼が遠い世界に行ってしまったような気がして苦笑いしながら玄関へ向かう。(実際には「行ってしまった」のではなくて、初めから向こう側の住人なのだが)

「はーーーい」

 プシュン、とドアが開く。
 そこには、四角いお膳を持ったレイが立っていた。

「あ、おはよう」
「おはよう。……これ」

 彼女がお膳を差し出す。蒔絵の金がシック&ゴージャスな漆塗りの黒いお膳には、同じく漆塗りの四角いお重のような器が、ダンダンダンダーンと重ねられており、最上段に見えるザルには、こんもりと日本ソバが盛られている。

「え、これ……何?」
「おソバ」

 つゆが入っているであろう太った徳利や、薬味が数種取り揃えられた小皿から見ても明らかにソバだが、いや聞きたいのはそういう事ではなくて、なぜ、ソバを持って訪れたのか?であって……
 困惑したシンジは口を開きかけるが、レイの服装が普段と違うと気づいて言葉を失った。

 飾り気の無い白いワンピース。

 それは取り立てて珍しい衣装では無いが、制服でもプラグスーツでもスクール水着でも無いレイを見たのは初めてだったので衝撃的に映った。端的に言って可愛い。もうちょっと言に贅を尽くせば、清楚で可憐だ。
 ミサトさんが見立てたのかな?と反射的に考えるも、何を言っていいのか言葉が出なくなったシンジの様子に、そんな心情の流転を知らないレイは小首を傾げる。

「どうしたの?」
「あ、うん……なんでもない。これ、貰っちゃっていいの?」
「ええ」

 良く分からないがくれると言うなら断る理由も無いのでお膳を受け取った。が、そのザルは、いち、にい、さん、4段重ねである。アスカとシンジ、二人で2枚づつは多いのでこれ即ちレイも含めて計算すべしである。
 それでもまだ1枚多い。

「あ、とりあえず上がってよ」

 こくり、と頷いたレイが葛城家に踏み入ろうとした時、誰も居住していないはずのお隣のドアがぷしゅん、と開いた。

「ごめんなさいレイちゃん遅くなって……あら? レイちゃん?」

 言いながらお隣の部屋から出てきたのは、仕事場ではお馴染みのリツコさんのお弟子さん、オペレーターの伊吹マヤ二尉であった。
 玄関先に居るはずのレイが消えたので、あれ?と首をひねったマヤは、視線を右に左に巡らせ、レイとシンジを発見する。マヤはにっこり微笑むと彼らに歩み寄った。

「こんにちわシンジくん、これからよろしくね」
「え、これから……って、もしかして、お隣に越して……?」

 唖然とするシンジは、手の中のお膳に目をやる。
 そうか、つまりこれは、引越しソバで……マヤさんがお隣さんで……で、どうして綾波が持ってくるの?

「あ、その顔は、司令から聞いてないのね? 今日から私と、レイちゃんがここで暮らすのよ」

 

「―――結局レイは葛城一尉と同じマンションか。あの、何とか神社はどうしたんだ?」

 第一中学校にはほど近いが、市の中心部からはちと遠い、緑あふれる敷地と掃除が手間そうな建物の写真を記憶から引き出す冬月副司令。せっかくの日曜なのに、地上はいい天気なのに、今日もお仕事なのでちょっと目つきが悪い。

「皮革(ひかわ)神社は立地が悪いから拒否された。山の上だからな、仕方あるまい」

 ゲンドウの前にはレイの新しい住居が記されたデータのプリントアウトが無造作に投げ出されている。コンフォート17……葛城ミサトとその庇護下にある少年少女が住まう部屋の隣室。エヴァパイロットの処遇にしては扱いが安直のような気もする冬月だが、いい歳をして子供の顔色を伺う上司の姿が可笑しかったので指摘は心にしまっておく。

「お前が一緒に住もうと言ったからだろう? 確か、あの団地に決まった時も断られていたな、碇」
「……」

 忘れたい過去を蒸し返されて、顔の前で組んだ手に隠れた口元が不機嫌に歪む。

「まあ、保護者が伊吹君なら適任だろう。いざと言う時には彼女らのプロテクトも解除できる。良い選択だと思うがね」
「……冬月。明日の評議会は頼んだぞ。私は忙しいのでな」

 今度は冬月の口元に不機嫌が伝染する。

「そういう細かい嫌がらせで鬱憤を晴らすのはやめてくれ」

 

 テーブルを囲むレイ、マヤ、対面にシンジ、アスカ。4人の前には海苔の散らし過ぎでソバが見えなくなっているザルが並んでいる。

 ずるずる。ちょっと早いお昼をすするシンジ。
 マヤから転居に至る顛末を聞いたアスカは、なるほど納得の様子で頷きながら、海苔を除けてソバを掴む。

「……で、変態エプロンじじいコト碇司令の誘いを断って、隣に引っ越してきたってワケね」
「へ、変態エプロン……」

 立場上肯定出来ないマヤは苦笑する他なく、箸を持ったまま頭頂部に近いほーの耳をふにゃぁ、と寝かせる。

「……司令は変態なの?」
「なっ、なんで僕の顔を見て聞くのかな?」
「変態も変態、大変態よ。あんたもそんなぼさーっと何も知りませ〜んみたいな顔してると、ああいう人種は調子に乗って、そのうち巫女装束とか着せられちゃうわよ」

 声を潜めてぼそぼそとレイに要らん事を吹き込むアスカ。

「で、でもどうしてマヤさんなんですか? リツコさんじゃなくて」

 父さんならやりかねない、とつい考えてしまい、慌てて話題を変えるシンジ。マヤはちゅるん、とおちょぼ口で僅かな本数のソバを吸うと、ごくん、と喉越しを楽しんでから答えた。

「先輩は、近頃ずっと本部で寝泊まりしてるそうなの。家賃が無駄だから、いっそジオフロントに移住したいわ、って言ってたから」
「忙しいんですね」
「そう、だから私も頑張って先輩のお役に立てるようにって、立候補したのよ。でも、厳密なルールだと私とアスカちゃんが一緒に住むのが『ならわし』なんだけどなぁ」
「……どこのルールよ、それは。そんな事言ったらリツコはミサトと住む事になるじゃないの」

 ジト目のアスカが低い声で突っ込みを入れつつ、徳利のつゆをソバ猪口に空ける。

「ふふ、じゃあレイちゃんには副司令の神主さん? ……って、アスカちゃん、嫌いなわりには事情に詳しいのね」

 少なからず驚き感心するマヤの顔を見て、油断して専門色の濃い発言をしてしまった……と顔に出さず悔いたアスカは、ぷい、とそっぽを向く。

「敵に勝つには戦力の把握は最低条件だからよっ。とにかく、日本の家は壁が薄いんだから、隣で騒いだりしないでよね」
「……惣流…さん」
「なによ、改まって」

 名を呼ばれるのは初めてなので、なんとなく居心地が悪い。
 レイはアスカの目をまっすぐ、その透き通った赤い瞳で見つめながら、言った。

「よろしく」
「はいはい、よろしくね」

 おざなりに答えながらアスカは、イヤな事思い出させる目の色だわ、と眉根を寄せ、沈んだ表情で顔を背けた。


 


 翌朝、出勤前の時間、朝日が眩しくも爽やかな居住区。
 張り巡らされた電線が、路上駐車された古い型の乗用車が、こじんまりした町並みと相まって、のんびりした空気を内包している。
 日中はあまり車も通らないような道路を子供たちがはしゃぎ声を上げながら走っていく。それを眺めながら缶コーヒーを飲む青葉。ギターを背負った私服姿は、ミュージシャンを目指しているうちに歳を重ねてしまった青年のようにも見える。
 彼と、リツコ、マヤは24時間OKなコインクリーニングを訪れていた。
 洗濯機の形をした全自動クリーニングマッシーンは、作業を終えてその口を開く。すると綺麗に袋詰めされた白衣と、リツコが今着ているのと同じ青い服が出てくる。洗濯・乾燥からパッキングまでオートメーションとはまた、便利な時代になったものだが、やはりそれなりに高い。

「これじゃ毎回のクリーニング代もバカにならないわね」

 リツコがぼやく。彼女たちの足下には幾つもの紙袋が居並んでおり、数えてみると贅沢なお昼ご飯が食べられる程になる。

「せめて、自分でお洗濯できる時間くらい欲しいですね」
「ウチに帰れるだけまだましっスよ」

 そう、青葉を含む発令所のオペレーターたちは、その重要性と機密レベルの高さから、はいチェンジと交替させるワケにもいかず、体調を崩されると困る為、忙しい現在でもきっちり家に帰れる時間には解放されている。他の部署では例えばMAGI立ち上げ時の技術局一課などでは1ヶ月帰れない者も居たらしい。あるいは目の前の黒いネコ耳のお姉さんも、着替えを取りに戻るのみで、ここしばらく自宅で眠れていなかった。

 ともあれクリーニング済みの制服が入った袋を抱えた一行はガラガラの電車に乗り込む。と珍しい先客の姿を見つけた。

「あら、副司令。おはようございます」
「「おはようございます」」

 自然に振る舞うリツコと、やや緊張して堅くなった青葉&マヤ。

「ああ、おはよう」

 広げた新聞からわずかに目線を外し、黒と白のネコ耳を見つつ挨拶を返す冬月。再び難しい顔で紙面に目を落とす彼の側にリツコは着席した。

「今日はお早いですね」
「碇の代わりに上の街だよ」
「ああ、今日は評議会の定例でしたね」
「下らん仕事だ。碇め、昔から雑務はみんな私に押し付けおって」

 それも同居を断られた腹いせでな。だったら初めからシンジ君と住めば良かったものを……。

「MAGIが居なかったらお手上げだよ」
「そういえば市議選が近いですよね。上は」
「市議会は形骸に過ぎんよ。ここの市政は事実上MAGIがやっとるんだからな」
「MAGI……3台のスーパーコンピューターがですか?」

 ちゃっかりリツコの隣に座ったマヤが問う。ちなみに普段から椅子仕事で足腰が弱る事を懸念している青葉は立ったままだ。背負ったギターはかなり大事なモノのようで、網棚に置いたりもしない。

「3系統のコンピューターによる多数決だ。きちんと民主主義の基本にのっとったシステムだ」
「議会はその決定に従うだけですか」
「もっとも無駄の少ない効率的な政治だよ。もっとも、アコギな議員からの反発も少なくはないがね」
「さすがは科学の街。まさに科学万能の時代ですね」
「古臭いセリフ」

 やや脱力気味に吊革に身体を預け、苦笑して呟く青葉。

「……そういえば葛城一尉の実験だったかな? そっちは」
「ええ。本日一〇:三〇より、第2次稼動延長試験の予定です」
「朗報を期待しとるよ」


 


 さまざまな計器が示す諸数値……心拍数やら1分間の呼吸の回数、そしてサーモグラフが示す体温分布などなど。
 ガラスの向こうでは紺のスウェットを着たミサトが、大仰で頑丈そうなルームランナーの上で走っている。電極を身体のあちこちに貼られて。

 もうかれこれ60分は走ったろうか。さすがに疲れが足腰に来て、手すりにもたれ速度が落ちる。
 ミサトの足が警告ラインより後ろに下がった為、監視画面に赤い『警告』の文字が躍る。

「実験中断! 回路を切って!」
「回路切り替え、時速0kmです」

 リツコの指示でマヤがコンソールを操作し、ずきゅうぅん、と鈍いモーターの停止音を伴いルームランナーは停止する。
 はぁはぁ、と荒げるミサトの息遣い。流れる汗と、運動により熱く火照った頬。

 即座にテスト結果がMAGIにより分析され、測定されたミサトの体力が数値化・グラフ化されてモニターを埋めていく。
 持久力の欄が赤く点滅している。少し弱いようだ。

「問題はやはりここね」
「はい。カロリー燃焼効率が、理論値より0.008も低いのが気になります」
「ギリギリの計測誤差の範囲内ですが、どうしますか?」

 計器を操る帽子をかぶった技師の問いに、リツコはNERVマーク入りマグカップを口に運びながら迷った。
 再度データ収集を行えば、単なる誤差か、それとも何かの不具合か分かるかもしれない。が、もう一度走らせるとなると疲労が深くなる。そうなった時に使徒が来たら? 疲弊した状態で適切な対応が取れるだろうか?

 検討の結果―――とりあえずは零号機・弐号機で対処可能ね。

「もう一度、同じ設定で傾斜角度を0.01だけ下げてやってみましょう」
「了解」
「では、持久走実験、始めるわよ」
『ちょぉぉおっと待ってよリツコぉ〜〜〜、少しは休ませてよぉぉおぉ〜〜〜』

 べったりと座り込んだ被験者の情けない声で、15分の休憩が挟まれる事になった。

 だが、この短い時間がネルフの危機を呼び込む事になるとは、この時点では誰も予想しえなかった。


 


 

美…少女との対比でますます……………な戦士

葛城ムーン

第11話

「ミサトが教えます!グラマーになる法」

 


 


 ―――長距離を走る際の敵は、水分を失う事と、途中でトイレに行きたくなる事である―――(他にもあるが割愛)

 汗を拭ったタオルを首にかけ、浸透圧がどうとかで吸収の良いスポーツドリンクを以って放出した水を補給したミサトは、2番目の敵を封じる為、実験施設から廊下に出た。
 ところがネルフ本部は複雑な構造をしている上、侵入者対策として案内板に時々ウソが書いてある為、ちょっと才能のある人間ならたちどころに迷う事が可能である。そしてミサトは残念ながら才能に溢れている。
 故に、迂闊に歩くと瞬く間に行方不明になってしまう危険があるので、対応策として単純だが有効な「多少遠回りでも知ってる道しか使わない」を実行していた。

 そんなワケで、5階程下のフロアのトイレを利用すべくエレベーターに乗り込んだ彼女は、

「お〜〜〜い!チョイと待ってくれえ!」

 とお気楽な呼び声を上げながら革靴で疾走する、仕事しなさそーな無精髭のスーツの男=加持の姿を認めると、無表情で閉じるボタンを押す。
 左右から迫り出した厚い金属の板が、迫り来る加持を押し潰さんと閉じていく。が、あとちょっとの所で加持の手が差し込まれる。

「……チッ」
「ひゅ〜ぅ、走った走った……こんちまたご機嫌ナナメだね」

 わざと聞こえるように舌打ちするミサトにもめげず、飄々と語りかける。だが、

「貴重な休憩なのに、疲れる人間の顔見たからよ」

 つれない返事。
 下降しだす箱の中、二人だけの時間。ミサトはむすっと膨れっ面で目線を外す。
 随分と嫌われたものだな、と苦笑いの加持が人差し指を操作盤に向け、ど・れ・に・し・よ・う・か・な、と行き先を選ぶ。

「……なんで適当に選んでるのよ」
「特に行く宛てがあったワケじゃないんでね。よし、ここにするか」

 プチ。無責任な発言とともにボタンが押される。


 

 あいの〜あいのーあいヴれっちゅで〜ん
 ♪♪♪〜♪♪♪〜♪♪♪♪〜♪〜♪〜〜



「ん? 誰のや?」
「あ、僕だ。ゴメン、先食べてて」
「おう」

 机を寄せて弁当を広げていた最中、シンジの携帯電話が鳴った。
 迷惑にならないよう廊下に出て液晶画面に目を落とす。発信者の名は「とうさん」と表示されており、何事かと緊張しながら通話ボタンを押すシンジ。

「もしもし? 父さん? 何かあったの?」
『―――シンジか。いや、問題無い』

 なにが問題無いの?なんて素人のような疑問は投げかけない。少なくとも非常召集では無い事がわかったので無言で先を促す。

『あー……報告を聞いたのだが、学校で…進路相談の面接があるそうだな』
「うん、こないだ父兄に報告しとけって言われたけど、そういう事はミサトさんに一任してあるんじゃなかったっけ?」
『うむ、まあそうなのだが……やはり書類上の保護者ではなく血縁者がな……』
「ダメだよ父さん、忙しいんでしょ? それに、偉い人がひょこひょこ学校なんかに顔出して、何かあったらどうするのさ? だからってSPゾロゾロなんてイヤだからね」
『う…む…』

 ピシリと斬って捨てられ寂しげに唸るゲンドウ。

『ではレィ「あと綾波にはマヤさんが来てくれるって」…………そう、か……』

「あ、それで思い出したけど、綾波の引越し、ちゃんとやってくれたんだね」
『あ、ああ。他ならぬお前の頼みだからな』
「でも前の部屋、ひどすぎると思わない? なんであんな変な所で独りにさせてたの?」
『いや、あれは赤木博士とレイが―――』

 プツン。
 ゲンドウの声が途切れた。
 しかも切られた時に聞こえるはずのプーップーップーッの音もない。

「……ん? もしもし? 父さん?」


 

 前触れ無くガクン、とエレベーターが揺れ、下降を停止する。

 階数ボタンに指を添えたまま天井を見上げる加持に、ミサトは冷たい目を向ける。その瞳がおどろおどろしいプレッシャーを放っている……何をした? いったいあんたは何をした?と。

「……お、おれじゃないぞ」

 押した途端の出来事だったため、その間の良さ(悪さ)に自分でも一瞬「オレか?」と疑ってしまった加持は、まず己の無実を信じる為に否定を呟く。

「停電、じゃないか?」
「まっさかぁ。ありえないわ」

 と言ったそばから明かりが消え、オレンジの非常灯が点る。眉をひそめるミサト。

「……変ねぇ。事故かしら?」
「赤木が実験でもミスったのかな?」

 自分が原因でなければ別にどーでもいいと言う感じの鷹揚な口振り。

「だから今は休憩中だっての……でも、ま、すぐに予備電源に切り替わるわよ」


 

 発令所も薄闇に包まれていた。
 こんな事もあろうかと中央作戦司令室全体の天井に設けられた蓄光パネル郡から放射される、淡い緑色の光だけが唯一、光源として闇を退け、狭いながらも視界を確保し、彼らが混乱に陥らぬ為の救いの糸として働いている。

「だめです。予備回線、つながりません」
「バカな。生き残っている回線は?」

 長髪を乱して報告する青葉に、冬月は驚愕を口の端に滲ませて次報を要求する。

「全部で1.2% 2567番からの旧回線だけです!」
「……生き残っている電源は全てMAGIとセントラルドグマの維持に回せ」
「全館の生命維持に支障が生じますが……」
「かまわん。最優先だ!」


 

 電力供給の停止は第3新東京市全域に、クリーニング済み袋詰めのミサトの制服入り紙袋を抱えた日向の上にも、等しく起こった。

「ほんっとズボラな人だなぁ葛城さんも……自分の洗濯物ぐらい、自分で取りに行けばいいのに」

 とは言いつつも頼みを断れず、わざわざ寄り道になるクリーニング店まで足を運んでしまっている事実がある以上、それを本人に言えるはずもない小心者の彼である。

 信号待ちをしていた日向は、赤い信号が消えたのを見計らって歩き出そうと踏み出した。
 ……が、青が光っていないので立ち止まる。

「……あれ?」


 

 リツコ、マヤ、揃いの橙色ツナギを着た技術局の皆さんも異常事態のど真ん中に居た。

 真っ暗な通路に面したスライドドアが僅かに押し開かれ、こじ入れられた金属のパイプが頭を覗かせる。

「「「よ…いしょおっ!!」」」

 テコと人数による力押しでドアはこじ開けられ、全体重を乗せていたツナギの人たちがどどどっとなだれ落ちる。
 それを踏み越えて廊下に出たリツコは、ライトを手に、ちょっと怒った顔をしながら、マヤを引き連れて早足で歩く。

「とにかく発令所へ急ぎましょう。7分たっても復旧しないなんてただごとじゃないわ」
「あの、先輩。ここの電源は確か……」
「正・副・予備の3系統。それが同時に落ちるなんて、考えられないわ」
「とすると―――」


 

「やはりブレーカーは落ちた、と言うより落とされたと考えるべきだな」

 常日頃から暗い部屋で暗く働いているゲンドウは、さして心動かされることも無く断定した。

「原因はどうであれ、こんな時に使徒が現れたら大変だぞ」

 さすがに暗すぎるのでロウソクに火を灯している冬月のごもっともな懸念を聞いて、手袋に隠れた唇の一端が不均衡に釣りあがる。ニヤリ。

「そのための葛城ムーンだ」
「まさか、これも予測の範囲なのか?」


 

 そして昼食の後、すぐに早退してネルフへおしごとに向かうチルドレンも、それに直面する。

「それは碇司令、後ろめたい事でも隠してるだけじゃないの?」
「そうかなぁ。途中で切ったっていうより、何か故障した感じだったんだけど……」
「もう、男のくせにいちいち細かいこと気にすんのやめたら?」

 ネルフ進入を目論む者が最初に阻まれる関門、機械仕掛けの頑丈な分厚い扉がずらりと並ぶゲートにて。
 IDカードを偽自動改札機風リーダーに通すシンジ。だが、

「あれ?」

 ピーン、と聞こえるはずの認証OKなサウンドは鳴らず、また電光文字表示窓に通行許可の「○」も表示されない。
 続いてレイも隣の機械にシュッとIDを通す。が、

「?」

 ―――やはり認証されず。却下されたのではなく、認証機構そのものが動作していないようで、まったくの無反応だ。
 カードを見詰めて、偽物とすり替えられていないか確認するが、それには異状は見られない。

「何やってんの? ほら、替わりなさいよ!」

 チンタラやってる二人に苛立ったアスカがレイを押しのけてIDをシャキンっとスライドさせる。

「?」

 見事な正確さ、鋭さ、キレを持ったカード捌きだが、んなこたぁ機械の立場からはどうでもいい。電気、エレキをくれない事には何とも動き様が無く、反応もできない。
 シャコン、シャキシャッ、シュパッ、と何度もカードを行き来させるアスカだが、回数を重ねてようやく停まってる事に気づいたらしく、ダンッ、と床を蹴りつけるように地団駄を踏む。

「あぁんっもうっ! 壊れてんじゃないのコレぇ〜〜!?」


 


 その頃、太平洋側の海中に使徒と思われる正体不明の反応を捉えた戦略自衛隊の現場のエライさん達は憤っていた。
 あらゆる通信手段から断絶し連絡のつかなくなった第3新東京市、ネルフに腹を立てる者。
 こんな時だけ現場に頼る上部組織、統幕会議の態度に嫌気がさす者。
 そして非常事態に迅速な対応をするべきなのに、逃げ支度を始めた政府に絶望を覚える者。(これは今に始まった事ではないが)

『使徒、上陸しました』

 要因は様々だが、使徒に対する通常兵器の無意味さを知る彼らには、警報シフトにする以外、出来る事がなかった。
 可能ならば海中に使徒を発見した瞬間に一撃ガツンと、N2魚雷でも喰らわせてやりたいくらいだったが、無論そんな職権も、そんな名前の武器も無い。

『―――使徒は旧熱海方面に向かい、依然進行中』

「とにかく、ネルフの連中と連絡を取るんだ」
「しかし、どうやって」
「直接行くんだよ」


 


 第3新東京市に戻って。
 アスカもまた憤っていた。

 ゲートから一旦撤退した子供たちは、どこかジオフロントに入れる場所が無いか、近隣の入り口を当たった。しかしこれが指紋照合装置も、光彩認識装置も含め、どの施設も動かない。
 地下で何か起きたのかと思い、本部へ連絡しようとすれば携帯電話(緊急モード)も、有線の非常回線も、一切つながらない。
 もしかしてジオフロント丸ごと停電?
 だとすれば何とお粗末な設備、あるいは危機管理システムだろう!
 こんな状態で使徒でも来たらどうやって対応するつもりなのか、と偶然にも副司令と同じ事を考えて怒るアスカ。

「どうしよう」

 オロオロするばかりのシンジ。無表情かつ薄暗い通路の床や壁が寒々しさを以って彼の不安を増大させる。
 ベンチに腰掛けたレイが鞄の中からネルフマーク入り名刺ケースのようなモノを取り出し、封印を切って紙切れを出しているのを見てシンジは彼女の手元を覗き込んだ。

「……何してるの?」

 じっと細かい文字に集中しているレイに代わって、腕組みをして次の手を考えていたアスカが答える。

「あんたバカぁ? 緊急時のマニュアルよ」

 あっ、そういえばそんなのもあったなぁ、でもいちいち怒らなくてもいいのに……とシンジが首をすくめる。一通り目を通したレイが顔を上げた。

「とにかく、本部へ行きましょう」
「そうね。じゃあ、行動開始の前にグループのリーダーを決めましょ」

 腰に手を当て、自信に満ちた声音で宣言するアスカ。

「で、トーゼンあたしがリーダー。異議ないわね? じゃあ行きましょ!」
「こっちの第7ルートから下に入れるわ」

 くるりと背を向けるアスカに、レイの落ち着いた声が突き刺さった。うぐ、と苦い顔のアスカ。
 だが出鼻をくじかれた程度でへこたれるはずも無い彼女はすぐに気持ちを切り替えると方向転換し、先頭を切ってどんどん薄暗い通路を突き進んでいった。

「でも、ドアは開かないんじゃ―――あっ……手動、ドア」

 そして程なく秘密の入り口は発見される。重厚な金属のドアの横に、これまた大きな、シンジの上半身ほどもある回すハンドルを確認してイヤな予感を覚えるシンジ。

「ほらシンジ、あんたの出番よ」

 リーダー様は顎で指図する。
 やっぱり僕ですか、と溜め息を吐いてハンドルを握ったシンジは、両手に力を込めてそれを回そうとした。

「よい…しょっ! ……あれ?」

 だが動かない。
 もう一度。ハンドルが予想より重かったので、今度は体重を乗せて思いっきり。

「くぅう…んっ! ……あれぇ?」

 微動だにしない。はいもう一度。

「ふ、ぐぐぐぐぅ……っ! ……はぁ、ダメだぁ」
「もう何やってんのよ! 退きなさい!」

 シンジが今世紀最大の全力を尽くして回らなかった最強のハンドルを奪ったアスカは、それを片手で握ると、事も無げにぐりぐりぐるぐる回してのけた。

「はーぁもーぅ、これだからひ弱なおぼっちゃんは……」

 ブツブツこぼしながら、愕然とするシンジが現世に戻ってくるより早くドアを開ききってしまう。

「……ほら、何ぼさっとしてんのよ。行くわよ?」
「あ、うん……」

 もしかしたらアスカは僕の知らない星から来た宇宙人なのかも知れない、と考えたシンジの発想が突飛なのか、それを導き出した現実が不可解なのか。
 ただ事実、やっぱりアスカさんには逆らっちゃいけないな、と言う結論だけが彼の心に強く刻まれた。


 

 再び地上。日向は止まってしまった人間コンベア、俗称『走る歩道』の上をトボトボ歩いていた。
 この設備、通電していれば徒歩の約2倍の速度で人間を移送できる優れモノで、乗った人間がコンベア上で歩けばなんと3倍のスピードで(以下略)
 まあ止まってしまえば硬くて冷たい狭い道に過ぎないのだが。

 そんな彼の頭上を飛行物体が通り過ぎて行く。
 音につられて飛行機を見上げる日向の耳に、その情報は飛び込んできた。

『―――こちらは、第3管区航空自衛隊です。只今正体不明の物体が本地点に対し、移動中です。住民の皆様は、速やかに指定のシェルターへ避難してください』
「やばい! 急いで本部に知らせなきゃ! でも、どうやって……」

 慌てて周囲を見回す日向。自転車・バイクの一台も見つかれば非常時につき無断で徴発するつもりである。
 そこへ通りがかったカモが……いや、協力を得られそうな白い選挙カーが一台。上空の戦自が流す警報などモノともせずにゆっくりと走って来る。

『こういった非常時にも動じない、高橋、高橋覗(のぞむ)をよろしくお願いいたします♪』

 うぐいす嬢の声が緊迫した日向の精神に水を差してくれる。度胸があるのか、迫り来る危機の大きさを知らないのか。
 一瞬だけ苦笑した日向は、すぐに真顔に戻ると、車の前に飛び出して両手を振った。


 

「それにつけても、あっついわねぇ〜」

 スウェットのお腹の辺りをつかんでバサバサと服の中に風を送るミサト。汗をかいてもいい格好だからと言っても、暑さで脳がとろけそうになるのは止められない。

「空調も止まってるからなぁ。葛城、暑けりゃ上くらい脱いだらどうだ? 今さら恥ずかしがることもないだろ」

 む、と口をへの字に曲げたミサトが服の乱れを正してキッチリガードを固める。

「こういう状況下だからって、変なこと考えないでよ」
「ハイハイ」

 やがて、立ちっぱなしに疲れた二人は腰を降ろし、足を曲げて壁に背中を預ける。

「そういや、こうして二人っきりで話すのも久しぶりだな」
「……そうね」
「不服かな?」
「別にそういうワケじゃ……ぁ、そ、そうよ、あんたの顔見てるだけでイライラしてく「俺は結構嬉しいんだが」

 遮られた言葉の続きは喉でつかえて出てこない。パクパクと口を開けたまま、何を言おうか考え直すミサト。
 しかし何も出てこない。口を結び、膝を抱える。

 二人ともエレベーターの閉じた扉を見つめたまま、視線を交わす事は無く―――

「でも良かったよ、元気そうで。あの頃の葛城、無理に明るくしようとしてたもんな。今の方がずっといい」
「……」

 ―――ちがうの。
 いまもかわってないの。
 ただ、すこしウソをつくのがうまくなっただけ―――

「ああ、そうだ。喉乾いてないか?」

 どこに持っていたのか、加持の手に紙パックのスポーツ飲料が2本。

「……こんなものいつも持ち歩いてるの?」
「いや、今日は特別。もともと差し入れに持ってきたんだが、タイミングが悪くて選手が留守だったんでね」

 ほら、と差し出されたそれを、目を合わせずに無言で受け取るミサト。

「それにしても本気でマズイな、こりゃ。空気まで淀んで来てる」

 呟きながら加持はパックに付随しているストローをのばし、銀の丸い部分に突き刺した。ミサトも天井を見上げ、脱出を考えながら同じく刺す。

 二人は同時にストローをくわえ、ちゅう、と吸った。
 口の中にじわりと、甘酸っぱい液体が広がる。

「……ぬるいわね」
「ああ」


 


Pretty (soon 30) soldier Katsuragi moon


 


 黒い、円盤から放射状に伸びる何本もの脚。割と手抜きっぽいデザインに見えるが使徒である。
 その針金のような細い足が、ビルの合間を縫って、住宅をまたいで前進する。お行儀の良い事である。

 その横を通り過ぎて行った爆走する白い流星。
 本来ならば市民各位にその名を叩き込むために走る選挙カーは、元・峠の走り屋だった運転手の力を借りて、最短のタイムを叩き出すべく、翼を広げていた。
 
『当管区内における非常事態宣言発令に伴い、緊急車両が通ります…って、あのぉー行き止まりですよぉ!?』

 ちょっぴり涙目のうぐいす嬢が暗く口を開く地下通路への入り口に設置されたバリケードを発見、鳴きそうな声を上げながら、身体にシートベルトが巻き付いている事を再確認する。
 うぐいす嬢と運転手の間から身を乗り出して白熱している日向は、衝突したら多分死ぬ速度であるのも構わず、突撃指令を出す。

「いいから突っ込め! なんせ非常時だからな!」
「りょぉぉぉかいっ!」
『――ぃいやぁぁもぅ止めてぇ〜〜〜っ!!』

 不運な彼女が喉で奏でるデスマーチをBGMに、紅白に塗られたバリケードをぶち折った選挙カーは、陽の当たらない道へと沈んで行った。


 

「このジオフロントは外部から隔離されても自給自足できるコロニーとして造られている。その全ての電源が落ちるという状況は、理論上ありえない」

 整列するロウソクの炎がゆらり、ゆらぁり…と副司令を闇に浮かび上がらせている。
 同じくゆらぁり…とリツコが浮かび上がる。

「誰かが故意にやったという事ですね」
「恐らくその目的はここの調査だな」

 ゲンドウも浮かび上がるが、彼だけは普段と印象が変わらない。いつも暗い所に居るからか、それとも元々ちょっと怖いからか。

「復旧ルートから本部の構造を推測するわけですか」
「シャクな奴らだ」
「MAGIにダミープログラムを走らせます。全体の把握は困難になると思いますから」
「頼む」
「はい」

 ロウソクの赤い灯が照らす範囲から歩き去るリツコの頭(特に耳)を眺め、待機している職員たちの見えない表情を伺いながら冬月は嘆く。

「―――本部初の被害が使徒ではなく、同じ人間にやられたものとは……やりきれんな」
「初では無い。忘れるな」
「……ああ、そうだったな。忘れてはおらんよ、決してな」

 冬月はリツコの頭に載った耳に、再び目線を向けて、記憶の中の彼女の母の姿を思い出していた。

(ナオコ君……)


 

 何も見えない。手探り状態で歩く三人。レイだけは壁に手をつくこと無くいつも通り歩いている。
 後ろの二人の足音が遠くなると、立ち止まって近づくのを待つ。結果、移動速度は7割以上低下してしまう。

「いつもなら2分でいけるのに……ここ、ホントに通路なの?」

 シンジの声。真っ暗なので声しか確認できない。

「あそこまで行けばきっとジオフロントに出られるわ」

 アスカの声。真っ暗だけど不適な自信にあふれた表情が想像できる。

「さっきから4回も聞いたよ、その台詞……」
「あんたってホント細かい男ね。つまんない事ばっかこだわってさ」「だまって」
「何よ優等生!」
「人の声よ」

 歩みを止める彼らの網膜に、右から左へと横切る光点が映る。
 そして微かに音も聞こえる。

『……シ……近…………ト……接…中…』

 内容は聞き取れないが、その声の主が良く見知る人物のモノであると識別したアスカ、シンジは、天の救い得たりとばかりに喜色をあらわにした。

「「日向さんだ! おおーーい! おおー〜〜い!」」

 何も見えないのに両手を上げて呼びかけてしまうのは普段から目に頼っている者の習性か。しかし、マイクで増幅された声がやっと届く程度の距離で彼らの呼びかけが伝わるはずも無く―――

『使徒接近中! 繰り返す。現在、使徒接近中!』
「「使徒接近!?」」

 不安の的中したアスカが眉をつり上げて厳しい表情に変わる。

「時間が惜しいわ。近道しましょう」
「リーダーは私よ! 勝手に仕切らないで! で、近道ってどこ?」


 

「冬月、使徒とは何なのだろうな?」

「何だ、こんな時に」
「使徒、神の使い。天使の名を持つ、我々の敵……なぜ戦わなくてはならないのか……」
「……お前も、全てを知っている訳では無いのだな」
「俺が知っているのは、後悔ばかりだ」

 感情を顔に出さないことでは愛娘レイにも負けないはずのゲンドウが、苦りきった自嘲を浮かべて吐き捨てた。

「戦う事が疑問ならば、降りかかる火の粉を払いのけるのは生物として自然な行為だ、とでも思っておくんだな。我々に迷っている暇は無いぞ」

 人生の先駆者として、落ち着いた声で語る冬月。ゲンドウは眼鏡を押し上げて位置を直す。

「……済まない。この暗闇で少し平静を欠いているようだ」

 

 アスカはさらに幾重にも機嫌を損ねていた。
 レイの提案した通風孔を四足で歩かされた、そのカッコ悪さがまず気に入らない。
 分かれ道で左右どちらに進むかレイと意見が分かれたのでシンジに求めたら、二人の顔色を伺って決めようとしない。

 挙句、

「やっぱり変だよ。上り坂だよここ」
「やっぱりとは何よ! いちいちうるさい男ね」

 リーダー権限で左の道に決定すれば、それに従ってついてきたクセに文句言うし。

 さらに、

「ほら、今度こそ間違いないわ!」

 と指差した、光が漏れる非常扉を蹴り開けた瞬間、眩しい陽光と、立ち並ぶビルと、街路樹と、すがすがしい空気が、否応なしにアスカの選択ミスを責める。
 凍りついて、どうフォローしようか内心焦りまくる彼女の視界が次の瞬間、ズシン、と重たい着地音とともに暗くなった。
 衝撃で転倒するアスカ。

 何事かと思えばたまたま通りがかった使徒の足の1本が、たまたま扉の前に足跡をつけたのだった。

「!?」

 空を覆わんばかりに巨大な使徒が横切るのを目の当たりにして、慌てて扉を閉じ、その場にへたりこむアスカ。

「―――どいて」
「……何する気? まさかあんた、ここから出るつもりじゃないでしょうね」
「そうよ」

 見上げればレイは例の美少女戦士に変身する包帯を制服のポケットから取り出して持っている。
 すっく、と立ち上がったアスカは扉を背に、腰に手を当ててレイを見据えた。

「アレに勝てるとでも思ってるの?」
「……わからないわ」
「無理よ。あんたの今の力じゃ、かすり傷ひとつ与えられやしないわ。死にに行くようなもんよ」
「……どうして、そんな事がわかるの?」

 レイとしては純粋に疑問を口にしただけなのだが、それは聞かれたくない部分に触れる彼女の秘密らしく、目をそらすアスカ。

「とにかく、独断での交戦は許されないわ。どうしても戦いたければ、発令所に急ぐのよ」
「……わかったわ」


 

 轟音が接近しつつあるのを耳に感じ取って、某一般ネルフ職員は振り返った。
 その鼻先をかすめて選挙カーが出現し、華麗なるハンドル捌きで巧みに職員たちを避けながら急ブレーキで停止。窓から顔を出した日向がマイクで中央作戦司令室に敵襲を伝える。

『現在使徒接近中! 直ちにエヴァ発進の要ありと認む!』

 それを聞いたゲンドウは立ち上がり、下へ降りるべくタラップへ向かって歩き出す。

「冬月、後を頼む。私はケイジでエヴァの発進準備を進めておく」
「……まさか、手動でか?」
「緊急用のディーゼルがある」

 タラップを降りていくゲンドウ。それを見送りながら冬月はひとりごちる。

「しかし……パイロットがいない「キャアアアアアアアアッ!!」

 闇をつんざく女性の悲鳴。

「なんだ!?」

 身を乗り出した青葉が、MAGIのある中央作戦司令室下層部を覗き込むと、選挙カーから飛び出し、逃げようと走り出すうぐいす嬢と運転手が見えた。
 そして、後部座席のドアが開き、人影が二つ、のっそりと車を降りてくる。

「―――マコト! と、あれは誰だ!?」

 片方は良く知る同僚だったが、彼はもう一人の人物に片手で首を締められ、車外に押し出されるようにして足を降ろした。そして日向の首に指を食い込ませているスーツ姿の中年男性は、口元にニヤリと殺意を含み真紅の瞳をギラギラと輝かせている。


 

 幾度かの分かれ道をレイの判断で選択し、ジオフロントの奥深く潜っていくチルドレン。だが彼らの小さな力に余る壁が立ちはだかる。
 コンクリートで固められ、封鎖された通路。その前で立ち尽くす三者。

「これは手じゃ開けられないよ」
「仕方ないわ。ダクトを破壊して、そこから進みましょう」

 手ごろな金属パイプを拾い、構造的に脆そうな部分を見上げ探すレイ。
 声を潜めたアスカがシンジにぼそぼそと話し掛ける。

「ファーストって怖い子ね。目的のためには手段を選ばないタイプ。いわゆる、独善者ね」


 

 ゲンドウが中央作戦司令室下層部に降り立つと、信じたくない光景がそこに展開されていた。

「……なんと言う事だ」

 一瞬、酸欠でも発生したかと思うような光景。バタバタと倒れている一般職員たちの死屍累々。
 いや、息はあるようだが、一様に気を失っている。

【ぬるい……ぬるいねぇ! こんなぬるい連中に市政を取り仕切られてるかと思うと腹が立つねぇ!】

 その惨状の中央、選挙カーのそばに立ち、片手でリツコの首をつかみ、ヒトとは思えぬ力でハンギングツリーしているスーツの男が居た。

【やはり市民の税金は市民の代表たる我らの懐に入るのが正しい政治だよ!! そうは思わないかね金髪の公務員君!】
「ぐ…うっ……ミサ…ト……返事…を…!!」

 ネコ耳を通じてミサトの持つ銀十字に声を飛ばそうとするリツコ。だが頼みのミサトは今停止したエレベーターの中。
 そして、彼女が現在ロザリオを身につけておらず、それは女子更衣室のロッカーに彼女の着替えと共に置き去りにされている事を忘れている!

【パソコンが考える政策? そんな利権も握れないような政治に意味などあるものか! 市民は我ら議員の為に血肉を供すれば良いのだ!!】

 じたばたと脚を動かし、首に食い込む男の手を外そうともがくリツコ。

 ゲンドウはどこかでその中年男性の顔を見た記憶があるような気がしたが、それを思い出すより早く、懐から銃を抜き、リツコをつるし上げる男の腕を狙って射撃した。

 ―――ガゥゥン!

 火薬の臭いを散らして放たれた銃弾は、しかし、男に到達する事無く、空中でひしゃげて静止する。
 輝く赤い光の壁。

「やはり、使徒か。貴様、何者だ」

 効かぬとは分かっているが、狙いをスーツの中年の頭にずらして、尋ねるゲンドウ。
 男はリツコを無造作に捨てると、スーツのポケットから櫛を取り、整髪料でびっちりと固められた頭髪を撫でつけると、ニヤリと笑った。

【何者って君ぃ、立て看見てないの? ポスター貼ってあるでしょう? 知らない? あ、そう。それでも選挙権持った市民? 私だよ、明日の市議会議員、高橋覗だよ!!】

 櫛をポケットに戻す男。その瞳は真紅に輝いている。

【そっちこそ誰だね? 少しはいい服着てるようだけど、主任かな? それとも課長か? まあどうでもいい。教えてもらおう、『マギー』とか言うパソコンはどこにある!?】


 

「も〜〜〜っ、カッコわるーーーい」

 四つん這いですら美学が許さないのに、さらに狭いダクトの中を進む彼女らは、ほぼ匍匐前進状態、制服も髪の毛もホコリだらけのいただけない状態になっている。

「縦穴に出るわよ」
「……あぁ〜〜またしてもカッコわるーーい」

 レイを先頭に、アスカ、シンジと縦に連なって、ダクトの壁面に両手両足を突っ張って昇っていく。
 見上げたアスカの視界に、レイのあられもない……が……で迫力の大画面………と、言う事は?
 カ〜っと赤面したアスカは膝と膝をなるべく接近させて、大開脚の影響を押さえようと踏ん張りつつ下に向けて怒鳴る。

「絶っっっ対に上、見ないでよ! 見たら殺すわよ!!」
「え?」

 うわっ。見てしまった。
 危なく手を滑らせて落ちるところを何とか耐えるシンジ。だが、次の瞬間には顔にアスカの蹴りがヒットする。

「バカ! バカバカ! 見るなって言ったでしょ!」
「あ痛っ、わっ、ゴメンっ! あうっ、いたっ! ……わっ!?」

 連続キックで落ちるシンジ。慌ててつかんだのがアスカの脚だったから被害は広がる。

「うわぁああああっ!」「きゃぁああああっ!!」

 ダクトの底が抜けさらに落ちる。
 折り重なるように落ちた先は、なんとも幸運な事に、目的地である発令所だった。
 ドサドサと立て続けに起きた落下音に驚いた冬月・青葉が目を向ける。

「君たち……」

 ワンテンポ遅れてレイが降って来て、両手を広げてスタッ、と綺麗に着地する。

「レイ…!」

 絶望に沈んでいた冬月の顔に僅かながら血の気が戻る。青葉が冬月に目配せを送る。

「副司令!」
「うむ、なんとかなるかもしれん」


 


 戦況は芳しくなかった。いや、戦況とは呼べまい。
 それは一方的に使徒・高橋覗が暴れまわり、ネルフ職員たちはATフィールドの前に成すすべも無く倒れていったのだ。

 日向が利用した選挙カーの後部座席に堂々とふんぞり返っていた立候補者。彼はその、非常時にも動じないその面の皮によって非常事態宣言発令後も選挙運動を続けていた。そしてそれが災いして、使徒の憑依に遭った。
 彼の身体を支配下に収めた使徒は、日向の要請を渡りに船と受け、まんまとネルフ中枢部まで侵入を果たした―――

 発令所でチルドレンに手早い青葉の説明(一部推測含む)がなされる。

 その言動から見るに、使徒の目的はMAGIの占拠もしくは破壊。
 最後まで抵抗した碇司令を排除した使徒は、現在彼らの眼下に存在する3台のMAGI構成ユニットのひとつ、バルタザールを包む金属を溶かすべく、その上に登っている。

 青葉は子供たちに下の様子を見せる。

「目標は、強力な溶解液でMAGIに直接進入を計るつもりだ」
「あそこの犬みたいな姿勢をしてるのが目標?」

 アスカの問いに頷く青葉。

「そう、飲みすぎたおっさんが気持ち悪くてぐったりしてるように見えるかもしれないが、違う。ヤツはその目から溶解液を分泌する能力を持っているらしく、恐らくあのポーズでないと上手く使えないんだろう。幸い液量が少ないのか侵食速度は遅く、まだバルタザールは無事だと思う」

「どうするんですか?」
「決まってんじゃない。やっつけんのよ」
「だからどうやって? エヴァは動かないし、ミサトさんは行方不明だし……」
「……作戦はあるわ」

 アスカに注目が集まる。

「あそこに降りる人間がディフェンス。ヤツの気を引いて溶解液からMAGIを守る。バックアップは別ルートから下降。落ちたネコ耳を回収し、オフェンスの封印解除。そしてオフェンスは必殺技にて目標を殲滅」

 一同の顔をぐるりと見渡すアスカ。

「これでいいわね」
「いいわ」

 頷くレイ、そしてシンジ。

「じゃあ変身できる優等生がオフェンス。シンジがバックアップ。いいわね」
「わかったわ」
「……うん」
「じゃ、行くわよっ!」

 アスカがタラップへ、シンジは反対側の階段へ走る。

「Gehen!」


 


【くそう……本体がここにあればこんな箱一発で溶かせるんだが……】

 MAGIの上で四つん這いになった高橋覗は、目からオレンジの涙をポタポタと零しながら愚痴もこぼす。
 金属板の上に垂れた雫は小さな水溜りを形成し、しゅうしゅうと音をたてて侵食していく。

【だが、まあ慌てる事もあるまい……これで市政は再び我ら議員の手に還る。そしてその次は、アダム様を……】

「ハァ〜〜イ! お・じ・さ・ま♪」

【―――んっ? 誰だ!?】

 顔を上げると、そこに日本人離れした体系の美少女が、にっこり笑って高橋覗を見ていた。
 彼女の着る制服、見たことがある。確か近隣の中学校のものだ。

「なにしてるの?」

 可愛らしく首を傾げるアスカ。もちろん油断させるための演技である。

【ああ、仕事だよ。ところでお嬢ちゃん、お父さんかお母さんはいつも何党に投票してるかな?】
「え? 確かぁ、ドイツ社会民主党とか言ったかなぁ」
【なんだよ外国人かよ! 票が無いなら用は無いよ。帰った帰った! おじさんは忙しいんだ!】

 なんかコイツ、使徒とかそれ以前にダメ人間じゃん、とかアスカは思った。

 

 そうしてアスカが戦っている(?)間にタラップを降りたシンジは、倒れているリツコに駆け寄ってその身体を抱き起こす。

「大丈夫ですかリツコさん! しっかりしてください!」

 揺らしたりしないようにそっと抱える腕の中、ゆっくりとリツコは瞼を開く。
 ほっ、と安堵の息を吐くシンジ。

「シ……ンジ、くん……?」
「……すいません、これ、借ります!」

 慎重にリツコを寝かせると、その頭から黒いネコ耳を外すシンジ。
 そして、それを自分の頭に―――頭に!?

「うっ……」

 恥ずかしい。

 ……逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……と繰り返し念じながら、装着!

 発令所を見上げ、こちらを伺うレイを確認したシンジは、キーワードを唱えた!

「綾波!変身だっ!」

「……碇君、キーワードが違うわ」

「えっ? あ、そうか! えっと、その、それじゃ……レ、レイちゃん変身よっ!」


 


 ―――パキン!と包帯からなぜか金属音。

 間髪おかず包帯を空に掲げ、美少女戦士・綾波マーズに変身したレイは、コンソールに膝をついて身を乗り出し、ライフルを構えるような形に手を固定すると、その狙いを高橋覗に向けた!

「……惣流さん、避けて」

 レイの声を浴びて弾けるようにバルタザールから飛び降りるアスカ。

「マーズ……ポジトロン・スナイパーーーーーーーーーー!」

 レイの右手の指が、見えない引き金を引いた。

 光が、瞬く間に、発令所の闇を吹き飛ばし、使徒の頭上へと降り注ぐ。

 ホワイトアウト―――



 
 
 



 主力兵器・葛城ムーンを欠いた状態のネルフは、多大な犠牲を出したが辛くも使徒に勝った。

 その肝心のミサトはどこに行ったかと言えば―――

「あ、先輩、ダメですよ、まだ安静にしてなくちゃ」

 エレベーターを待つマヤの横に、包帯を頭と腕に巻いたリツコが立つ。

「そうも行かないわ。早く空調設備だけでも復旧させないと、みんな息が詰まってしまうわよ」

 チーーン。
 到着するエレベーター。
 開く扉。

「……ミサト」

 呆然と呟くリツコが、重たい箱の中に遭難者二名を発見。

 クス、と微笑むマヤ。

「良かったですね、二人とも無事で」
「そうね……でも、ちょっと腹が立つわね。私たちが苦労してる間に、この子は……」

 眠る加持と、彼の肩に頭を預けて眠るミサト。


 


 すっかり夜も更けて、いまだ電力供給が止まったまま、誠心誠意作業中のジオフロントから半ば追い出されたシンジたちは、暗い道を歩いて帰るワケにもいかず、草叢でごろごろしながら待っていた。

「電気、人工の光がないと星がこんなにキレイだなんて、皮肉なもんだね」

 地上を埋め尽くす明かりで掻き消えていた星たちも、今日は全身全霊を込めて瞬いている。

「でも、明かりがないと人が住んでる感じがしないわ」

 黒く塗りつぶしたように静まりかえった都市に目を向けたアスカはそう言う。
 そして期待に答えるかのように、息を吹き返した街のあちこちで、小さな地上の星が輝き出す。

「……ほら、こっちの方が落ち着くもの」

 膝を抱えて座るレイは、二度、三度瞬きすると、以前読んだ本に書かれていた一文を再生してみる。

「人は闇を恐れ、火を使い、闇を削って生きてきたわ」
「てっつがくぅ〜」

 茶化すアスカは大の字に手足を伸ばして欠伸をした。
 その時、視界をかすめる、黒い何かが―――シンジの頭の上に……三角に、尖ったモノが二つ……

「あっ、あんたバカぁ? そんなの、いつまでかぶってんのよ!」
「えっ? ……あ、ああーっ!」

 頭を押さえて顔を真っ赤に染めるシンジ。

「碇君……博士みたい……」






 
つづく 

 
2001/03/11 初版。

「高橋覗を総理に」な世論は三笠どらまで送ってどうするのっ。

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