時に、西暦2015年
第3の使徒
サキエル、襲来
不意に山間から大きな何かが顔を出した。
その周囲に戦略自衛隊のものであろう、ヘリや戦闘機が飛び回っている。
「なんだろう……大きいなあ」
そう思っている間に戦自の攻撃が雨あられと降り注ぐ。
ドドーン!! ババーン!! ズゴゴゴゴゴーン!!
爆風は広がる。だが、巨大生物にはさっぱり効いていなかった。
巨大生物は戦自などハエと同等であるかの如く好き放題に暴れ回る。
使徒に対する通常兵器の効果は認められず
国連軍は作戦の遂行を断念
全指揮権を特務機関『ネルフ』へ委譲
同夜、使徒、ネルフ本部直上へ到達
当日、接収された
サード・チルドレン
3人目の適格者
碇シンジ
「赤木博士! 葛城一尉! 構わんからシンジをエントリープラグに放りこめ!!」
指示を浴びた二人の動きが一瞬止まる。そして同時にシンジに顔を向ける。
「ごめんねぇシンジ君、命令だから……」
「……仕方ないわね」
「えっ、あっちょっと……」
ついさっきまでいがみ合っていたリツコとミサトは、シンジの腕をそれぞれ引っつかむと瞬く間にロッカールームへ駆け込み、服を剥ぎ取ったりプラグスーツを着せたりいろいろして、初号機のエントリープラグに据え付けてしまった。
エヴァンゲリオン初号機搭乗を承諾
だが、起動失敗
出撃を断念
代わって
「使徒の殲滅は、初号機に代わって葛城一尉が行います。
司令、出撃許可を!」
「……反対する理由はない。存分にやりたまえ」
ゲンドウはニヤリと笑う。まるではじめからこうなる事を予想していたかのように落ち着いた様子だ。
リツコが鋭い声で指示を放つ。
「現時刻をもって第一種戦闘配置を解除! かわって総員第零種戦闘配置!」
『総員第零種戦闘配置! 繰り返す! 総員第零種戦闘配置!』
作戦課長葛城一尉 初出撃
ミサトは初号機が地上に運ばれる予定だった、巨大な昇降機に飛び乗った。
そして衝撃にそなえて両手を床につき、態勢を整える。
『いいわよ! 出して!』
リツコは真顔でゲンドウを振りかえる。
「構いませんね?」
「……使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」
その言葉を承認と受け取ったリツコは、マヤに頷きかける。
「進路オールグリーン。……葛城さん……ごめんなさいっ!」
ぎゅっと目をつぶったマヤによってポチっ、とボタンが押され、昇降機は強烈な加速度で地上へ向けて上がっていく。
「くっ……うぅぅぅっ……!」
押しつぶされそうな重さを感じて苦悶するミサト。
モニターに表示されている昇降機の現在位置が点滅しながら上へと向かって動いていく。
ネルフ、初の実戦を経験
第一次直上会戦
技術一課赤木博士、
第一種着装式決戦兵器使用承認権発動
ネコ耳装着
後、
そして、ぐっと拳を握り締めて羞恥を心の隅に追いやり、キーワードを唱える。
「ミ……ミサトちゃん! 変身よ!!」
赤面
いつ設置されたものか、周囲の兵装ビルの屋上から、スポットライトがミサトに集中する。
そしてどこからか場を盛り上げる勇ましいオーケストラの音色が溢れ出す。
ミサトは眼前で次の行動を探っている使徒にびしぃっと指をさした。
「第3新東京市を破壊し! あまつさえ人類滅亡を企む使徒!
たとえ戦略自衛隊が許しても、このあたしが許さない!!」
ミサトの背後に、赤いレーザー光線がNERVの紋章を浮かび上がらせた。
「葛城ムーーーン!!」
決めポーズを舞うミサトの動きはまるで闘志を奮い立たせるウォークライのようにも見える。
「ネルフに代わって……おっ仕置きよっ!!」
第3使徒及び葛城一尉における
A.T.フィールドの発生を確認
「ムーーーン・プリンセスーーーー―――」
プログレッシブ・ムーン・ロッドは立ちあがろうとする少女に、その先端を向けられる。
「ハァァァレルヤーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ミサトの声と共にハートからはひときわまばゆい輝きが溢れ出した!
強烈な閃光によってカメラは映像を捕らえられず、発令所のスクリーンは全く用を成さなくなっていた。
プログロッドからほとばしる、目も開けていられないような爆発的なピンクの光を浴びて少女は、ぎゅっと目を閉じて硬直する。
光は、どういう原理なのか少女の胸部から赤い球体を引きずり出す。
少女の唇が苦痛の形に歪む。
葛城一尉、目標のA.T.フィールドを浸食
【……う…、………ぁ……、……り……】
赤い球体は完全に少女から分離する。
【リ…………】
―――パシャァーーーンッ!
ガラスが砕けるような音を立てて赤い球体は千の破片に姿を変えた。
くわっ!と瞼が開かれ、少女は叫ぶ!
【―――リバァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーァァスッ!!】
奇怪な断末魔の声と同時に、倒れたままだった巨大生物の身体から、夜の帳を引き裂いて、今までで最大の十字爆炎が上がった。
使徒、殲滅
迎撃施設、一部破損
葛城一尉、爆睡
同事件における被害者の有無は公表されず
『第3新東京市街戦』 中間報告書
責任者 技術開発部 赤木リツコ博士
「その結果として、未知の目標に対し、標準サイズの人間が初陣に挑み、これを完遂せしめた事実。葛城ミサト一尉の功績は特筆に値するものである。
ただ、私個人としては新たな問題点を浮き彫りにし、多々の反省点を残す苦渋の戦闘であった」
鈴原トウジの作文より抜粋
「ワシの妹はまだ小学2年生です。この間の騒ぎで入院しました。敵やなく味方が暴れて入院したんです。ワシはそないなアホな話、とても許せません。
あのコスプレを作った大人に、妹の苦しみを、ワシの怒りを教えたろ、思います」
第4の使徒
シャムシエル、襲来
当時、地対空迎撃システム稼動率48.2%
第3新東京市、戦闘形態移行率96.8%
洞木ヒカリの手記(一部)
「いつも友達と学校とかで避難訓練ばかりやってたから、今更って感じで実感無かったです。
男の子はイベント気分であの服装を喜んでたし、女子の中にも新体操みたいで面白そうなんて言う人も居ました。私は、あんな恥ずかしい格好で良く外を歩けるな、って思いました」
使徒、第3新東京市上空に到達
【ワシはあんたを殺さなあかん……殺しとかな、気が済まんのやぁぁぁっ!!】
シュバッ、シュババッ!
トウジの両手から伸びる光の鞭が次々に繰り出され、かわす葛城ムーンの足元に爪あとを残していく。
(くっ……これじゃロッドが使えない……!)
【どうした!? 逃げることしかでけんのか葛城ムーン!
根性みせやぁぁぁぁっ!!】
苛烈なまでの押しの一手。
復讐の刃をなんとか避けながらミサトはトウジの隙を窺う。が、変幻自在に形を変える光の鞭に死角は見えない。
「あっ……!」
草に足をとられ転倒するミサト。
トウジの瞳がギラリと輝いた。
【妹の仇じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!】
ぐわっと両手を振り上げるトウジ。そして光の鞭は空気を裂いて葛城ムーンを襲う!
第二次直上会戦
特別非常事態宣言の発令によって起床を余儀なくされた葛城一尉は、眠い目を擦りながら同居人が用意してくれた朝食を取るべくキッチンへ向かっていた。
「……う〜〜〜〜、徹夜明けに来るんじゃないわよ、も〜〜〜せっっっかくいい気持ちで寝てたところなのに……こっちの都合はお構いなし……あたしの嫌いなタイプだわ……」
しかし、テーブルに並ぶのは空の食器ばかり。
「……ありゃ?」
そして足元で満足げに寝転がるペンギン。因果関係の推測は容易だった。
「こいつ……食い物の恨みがどれほど恐ろしいか教えてやる……っとそんなヒマないんだっけ。
命拾いしたわね……帰ったら覚えてなさいよぉ」
朝食抜きのアクシデントに見舞われるも―――
「―――今よっ、葛城ムーン!!」
リツコの頭の上で存在を忘れられていた黒いネコ耳型インターフェイスが、命令を受けて解除信号を発する。
封印の解除を受けて、プログロッドを手に華麗に舞う葛城ムーン。
「ムーーーーーン・プリンセスーーーーーーー・ハァァァレルヤーーーーーーーーーーーっっ!!」
真の力を解き放たれたロッドがトウジに向けられて輝きを放った。
ロッドの先端から溢れ出す爆発的な閃光が浴びせられる。
びくんっ、と硬直したトウジの目が見開かれ、震える唇から言葉がもれる。
【リ………リバースなんやな……そうなんやな……】
しかし、トウジからコアが露出する気配はない。
【―――リバぁぁーーーーーーーーーーーーースやぁーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!】
光の奔流の中で絶叫するトウジの瞳は赤から黒に戻った。
目を閉じたトウジは静かに倒れる。
使徒、殲滅
ネルフ、原型を留めた関西人のサンプルを入手
だが、分析結果の最終報告は未だ提出されず
第5の使徒
ラミエル、襲来
「無人偵察機の攻撃はATフィールドにより無効! 肉眼で確認できる程強力なフィールドです!」
「目標内部に高エネルギー反応! 円周部を加速、収束して行きます!!」
リツコが睨むようにスクリーンを見つめていると、それは強烈な光を浴びたように真っ白く、何も見えなくなった。
そして、白く染まった映像が空の青さを取り戻すと、使徒の回りを飛んでいたゴマは一粒残らず消えていた。
「まさか……加粒子砲……?」
「無人偵察機全滅! 使徒の砲撃と思われる発光により撃墜されました!」
「目標に再び高エネルギー反応!」
ミサトの戦士としての勘が激しく警鐘を鳴らした。
「伊吹二尉、零号機戻して!」
「えっ、は、はい!」
止めようとするが既に遅く、零号機の機体は道路を割り開いた搬出口から現れ外気に晒される。
『零号機、作戦開―――』
使徒の一部が光る。
「ダメっ! よけて!」
兵装ビルを貫いた光線が、零号機の胸部をえぐった。血飛沫のように赤い火花を散らしながら。
難航不落の目標に対し、
葛城一尉、ヤシマ作戦を提唱、承認される
ファースト・チルドレン
最初の適格者
エヴァ零号機専属操縦者
綾波レイ
唯一戦闘可能であるエヴァ零号機にて、再出撃
『敵シールド、第17装甲板を突破! 本部到達まで、あと3時間55分』
午後8時11分、ラミエルは飽きもせずだらだらとネルフ本部へ向けて掘りつづけている。
状況報告は否応無く身体中の緊張感を引きずり出す。そしてそれはポジトロンライフルへの電力供給の為に集められた双子山山中朝日滝付近で停滞する運搬車のドライバーたちにも伝わっていた。
『四国及び九州エリアの通電完了』
『各冷却システムは試運転に入ってください』
張り巡らされた太いケーブルの集中する所でレイの駆る零号機はEVA専用改造陽電子砲(ネルフ仕様・もと戦自研自走陽電子砲)ことポジトロンスナイパーライフルをセッティングしている。
同深夜、使徒の一部、ジオフロントへ侵入
ネルフ、ヤシマ作戦を断行
「あれは……まさか!!」
プラグスーツが違う。葛城ムーンの青いスコートでは無く、白い。
「スーパー、葛城ムーン……!?」
プログレッシブ・ムーン・ロッドを手にしたその白い戦士は、先端のハートに白い閃光をたたえて回り出す。
そう、ロッドを持ったままその場で、フィギュアスケートで良く見られるようなスピンをし始めたのだ!
「あのロッドが高エネルギー反応の中心のようです!」
「葛城ムーンを中心に円周部を加速しつづけています!!」
「1000……2000………4000……まだ上がって行く……」
リツコの呟きはエネルギー反応の数値が上がるに連れて喜色を帯びて行く。
ぐるぐると回転するミサトの速度はぶんぶんからぎゅいんぎゅいんを超えて、既にしゅおんしゅおんに変化していた。
ロッド先端のハートから発せられる白光も眼を刺すほどに強烈になっている。
「ムーーーーーン・ポジトロンーーーーーーーーーーー―――」
その光が持つ力を感知し、無視できなかったのだろうか、ラミエルの砲撃が再び止んだ!
すぐに第四撃を放つべく唸るラミエル。狙いは葛城ムーンに移行したようだ。
奪うべく「幻の銀十字」を消し飛ばす危険を侵してまでもミサトを撃つと言う事は即ち、ラミエルは感じたのだ。葛城ムーンの内包するエネルギー量は今や日本中の総電力合計を上回り、確実におのれを滅ぼす力なのだと!
「―――ヒーーーーーーーーーーーーーーーート・アターーーーーック!!!!!!」
裂帛の気合と必殺の気迫を声に乗せ、回転していたミサトの身体は慣性の法則を完全に無視してピタっと静止した。
白熱するロッドの先端は髪の毛1本の狂いも無くラミエルのコアを狙い定めている。
わずか数十ミリ秒の間を置いてプログ・ロッドから白いビームが発せられた。
その断面はどうしてかハート型をしている。
―――世界が白一色に染まった。
ヤシマ作戦、完遂
エヴァ零号機、大破
葛城一尉、筋肉痛
だが、パイロットは無事生還
相田ケンスケの個人資料より抜粋
「碇は何も教えてくれないけど、やはり葛城ムーンには隠れた超絶能力がまだあるに違いない。いや、そう確信する。
その理由はあの衣装だ。今はまだ僕を始めとする識者しか気付いていないが、彼女が変身によって身にまとうソレは、旧世紀末テレビ放映されていた(長いので中略)
フェティシズムとも違う何かを、彼女は持っていると思う。近々三十代とは思えないほどに」
第6の使徒
ガギエルに、遭遇
セカンド・チルドレン
2人目の適格者
エヴァ弐号機専属操縦者
惣流・アスカ・ラングレー
エヴァ弐号機にて、初出撃
接近するにしたがって白い波飛沫はその巨大さを増してくる。
「こっちに向かって来てる!」
「さ、跳ぶわよ」
「とぶ?」
白マントの弐号機はぐぐっと膝を曲げると、タンカーを蹴ってその巨体よりも高く跳び上がった!
そしてお隣りの甲板へ着地、足跡は刻まれ、飛行甲板はぐしゃぐしゃに踏み荒らされてしまう。
さらに二度三度と跳躍を重ね、フネからフネへ軽快に飛び移っていく赤い巨人。
ガギエル本体が弐号機を追いまわすも、追いつくに至らない。双眼鏡を構える副艦長に苛立ちが見える。
ぴょんぴょこ飛びまわる弐号機に、つい気を取られたのかチェイスに没頭している使徒。
弐号機の目指す先は電源ソケットが用意されている筈の空母だ。
『エヴァー弐号機っ着艦しまーーーす!!』
ひときわロングジャンプを決める弐号機の衝撃で、空母が傾く。
甲板でバランスを取り、傾きと反対方向に重さを乗せて補正する弐号機。しかしその過程で戦闘機やら何やらがザバンザバンと海に落ちていく。
海上での近接戦闘
及び
ぐっと胸の十字架を握り締めたミサトはいつも遠くで見守ってくれている勇敢なネコ耳姉さんを呼ぶ。
「リツコっ、プロテクト解除お願いっ!!」
そしてカチリと封印解除の音が……しなかった。
「あれ? リツコっ! リーツーコーッ!?」
壊れたのかと思いロザリオをばしばし叩きながら繰り返し呼びかけるミサト。しかし直後、重大なミスに気づいて顔色を蒼白に変えた。
「……圏外だわ」
葛城一尉、戦闘不能
旧伊東沖遭遇戦にて
懐に隠し持っていた銃を抜いたミサトは、連射して一気に全ての弾を撃ち尽くした。しかしATフィールドは破れず、ひしゃげた弾がパラパラと落ちるのみ。
完全に副艦長が勝利を確信し、嘲るような笑みを浮かべ右手をミサトに向けた。
その掌にブクブクと赤い色の泡が立ち、浮かび上がるように真紅の球体が迫り出てくる。
【弱すぎだ。話にならんよ、君は】
その球体を握り締めて副艦長がトビウオの様に跳躍した。そして全力を篭めて拳を繰り出す!
赤く光るATフィールドの塊となった彼が目前に迫る!!
その時だった。
後にケンスケが語る『砲弾のような黒くてツヤのある丸い物体』が艦橋のガラスをぶち抜いて飛来し、なんと副艦長のATフィールドをもぶち破って!彼の側頭部に激突したのは!!
ごっ。
一瞬にして赤い光は消え、副艦長は『物体』が飛んできたのと反対方向へ、どぐしゃっ、と墜落した。
正体不明の高速飛行物体直撃
使徒、殲滅
『この遭遇戦で、国連海軍は艦艇の3分の1を失った』
一つ目バイザーでお馴染みの議長さんが、流れる映像に口を挟む。
「お言葉を返すようですが、沈んだのは無人の博物艦隊だけ。本来は取るに足らない出来事です」
『責めているのではない。この程度の被害で済んだ事はまたしても幸運と言える』
「―――し、失礼します。あ、父さん、あの、お茶持ってきたんだけど」
お盆に蓋つきの湯飲みを載せて、プラグスーツ+ひらひらエプロンを着用したシンジが暗闇をおっかなびっくり歩いてくる。
「うむ、わざわざ済まんな。そこの珍しいメガネのおじいさんにも振舞ってやれ」
『碇、貴様……っ』
「おっと、そうでしたな。立体映像の議長閣下には、このシンジが煎れた美味しい茶は飲めないのでしたな。いやあ、こんなに旨いのに、残念ですなぁ」
キールはギリギリと歯軋りする程悔しかった。たかが茶ごときで何故こんなに悔しいのか自分でも良く分からないが。
第7の使徒
イスラフェル、襲来
「じゃ、あたしから行くわ! 援護してね!」
一方的に宣言したアスカは、両手を上げて威嚇している?のかも知れない使徒へと、海面に飛び石の如くならぶビルの上を跳ねながら近づいていく。
零号機がパレットガンを構える。狙いは使徒の胸に輝く赤い球2ヶ。
バララララララ、と断続的に銃口が光り、弾丸は使徒の前面で弾ける。効いてるようには見えないが、気は引いているだろう。
足場の悪い中で驚きの高さまで飛びあがる弐号機。使徒は顔らしき部分の眼孔らしき部分で弐号機を追うが、見ているのかどうなのか。そもそも眼とか耳とかあるんだろうか?
「ぬああああああぁっ!!」
気合一閃、振り上げたビームナギナタじゃなくてソニックグレイヴで唐竹割を見せながら弐号機は、飛び石ビルのひとつに着地した。
ずばしゃっと縦に切れ目の入った使徒が、そこからふたつに割れて、ぷるぷるした切り口を見せつつ活動を停止する。
『お見事っ!』
ミサトもついついガッツポーズ。
カッコ良く決まって気分が良くなったアスカはハーフ&ハーフになった使徒に背を向けた。
「どう?ファーストチルドレン! 戦いは常に無駄なく美しくよ!!」
だが! ソニックグレイブの刃はふたつのコアの間を抜けて、その破壊にまでは至っていなかった!
ひくひくと動き出した使徒の残骸は、切断面から裏返るかのようにビュルリンと変形し、それぞれが一体のヒトガタとして再生していく!
『ぬわんてインチキっ!!』
弐号機が振り向くと、使徒はオレンジとグレーの双子になっていた。
初の分離・合体・複数憑依能力を有す
パレットガンの砲撃にさらされる使徒。その全身に隈なく浴びせられた弾丸のひとつが、偶然ながら2体のコアに同時命中し、その表面にビシっとヒビを入れるに至った!
これは大ピンチと判断した使徒は、ひとまず合体だ!と離れた半身に体当たりを敢行する!
【お、おおっ! な、なんだっ!? ひっぱられ、るっ!?】
【うわーっ、身体が勝手にっ!!】
不意に浮かび上がるケンスケと日向。磁石が引き合うように空中を滑る二人の身体が、合体を果たせるはずも無く、無情にも両者は……
―――ゴイィィィンッ!!
【【う゛っ!!】】
したたかに頭を強打してしまい、そのメガネにもビシッとヒビが入った!
巨体のグレーとオレンジも、接触までは出来るがそこから一向に融合を果たすことが出来ない。これ即ち使徒同士よりも、使徒とケンスケたちの結び付きが強くなっているからであろう、とリツコは推測する。
だが何故合体できないのか理解していない使徒は、何度か離れたり体当たりしたりを繰り返し、なんとか合一を果たさんとする!
しかしそれがもたらす結果は!
―――ゴスッ! ガスッッ! ゲスッッッ!! ドガスッッッ!!!
ガンガンガンガン頭をぶつけられるメガネさんたちにダメージが増えるだけだった!
訂正
分離・合体、もしくは複数憑依、いずれかの能力を有す
エヴァ零号機、同 弐号機
葛城一尉、綾波レイの4点同時過重攻撃にて
使徒、殲滅
第8の使徒
サンダルフォン、
浅間山火口内にて発見
ネルフ、指令A−17を発令
全てに優先された状況下において、初の捕獲作戦を展開
「……深度1300。目標予測地点です」
「アスカ、何か見える?」
『……居たわ』
MAGIによる対流速度の予測は正確だったようで、CTモニタに影が映る。観測機によって撮影された映像よりは鮮明だが、それでも溶岩中に見える楕円形の異質な物体は、影としか呼べないようなモノだ。
「目標を映像で確認」
「捕獲準備」
「お互いに対流に流されているから接触のチャンスは一度しかないわよ」
身を乗り出してマイクに近づくリツコ。ぴんと立った耳がぴくぴくとせわしなく周囲の物音をキャッチしている様子から緊張が見て取れる。
『わかってる。任せて』
どこから湧いているのか自信たっぷりの答えが返る。頼もしい印象である。
「目標接近まであとサンマル」
『相対深度2.2。軸線に乗ったわ』
物干し竿を使徒のタマゴに添えたアスカは、キャッチャーを作動させた。竿の枝部分から発生する板状のエネルギーで箱が形作られ、それを閉じ込める。
ぴぴぴぴぴ、ピーー。
キャッチャーの状態表示をしていたモニタが、目標の捕獲を感知して完了を知らせた。
『電磁柵展開。問題なし』
「目標捕獲しました」
目を閉じて、ふぅ、と張り詰めていた空気を吐き出したアスカは、再びキリっと表情を引き締めると、報告する。
『捕獲作業終了。これより浮上します』
エヴァ弐号機、作戦を遂行
即座に作戦目的は、温泉へと変更される
放物線を描いて柵を越えていったボディシャンプーは何かにぶつかったらしく、ぽこっ、と間の抜けた音を発する。
「いたっ! もう、ちゃんと投げてよアスカぁ」
「……ちぇ、ハズレかぁ」
加持の手に届くように狙ったのだが、外れたのでつまらなそーに呟く。
「―――大丈夫か? 今、結構強く当たったように見えたんだが怪我は無い?」
「え、ええ、別になんとも…」
「大事な所だから、傷になってないかちゃんと見たほうがいいぞ。どれどれ…」
「キャッ! あっ、ぁんっ」
ぴくっ。
なんかみょーに色っぽい声を聞いて動きが止まり、目だけがそーっと柵の方を見る女湯の4名。
「……ほーお。シンジ君、君はきめ細かいいい肌をしてるな。こんなにすべすべだと葛城にうらやまれるぞ」
「やだ、ぁ、くすぐったいですよぉ。もう加持さぁん」
「じゃあ、ここは?」
「うゎあっ! そ、そんなとこ触らないでくださいよぉっ!」
「ははは、いいじゃないか。へるもんじゃないだろう?」
なまじ声しか聞えないモノだから、とてつもない場面を想像させられてしまったりする女性陣の4名は、ほんのり顔を赤くしながら、じっとみじろぎもせずに会話の行く末を見ま……いや、聞き守ってしまう。
エヴァ弐号機パイロット、温泉を遂行
使徒ほったらかし
第9の使徒
マトリエル、襲来
【パソコンが考える政策? そんな利権も握れないような政治に意味などあるものか! 市民は我ら議員の為に血肉を供すれば良いのだ!!】
なんかコイツ、使徒とかそれ以前にダメ人間じゃん、とかアスカは思った。
「……すいません、これ、借ります!」
慎重にリツコを寝かせると、その頭から黒いネコ耳を外すシンジ。
そして、それを自分の頭に―――頭に!?
「うっ……」
恥ずかしい。
……逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……と繰り返し念じながら、装着!
発令所を見上げ、こちらを伺うレイを確認したシンジは、キーワードを唱えた!
「えっと、その、それじゃ……レ、レイちゃん変身よっ!」
パイロット3者による同時作戦展開により、
市議会議員候補、殲滅
第10の使徒
サハクィエル、襲来
成層圏より飛来する目標に対し
エヴァ2機による直接要撃にて、
使徒、殲滅
第11の使徒
襲来事実は、現在未確認
ネルフ本部へ直接侵入との流説あり
『いかんな、これは。早すぎる』
人類補完委員会・特別招集会議
暗闇に老人とオッサンが向かい合っている。
かたや珍しいゴーグルのキール・ロレンツ議長、かたや珍しいヒゲの碇ゲンドウ総司令、善人っぽくない人たちである。
周囲にいつもなら居並んでいる筈の委員の姿は無く、ゲンドウの後ろでこわごわ立っているシンジを含めても3人しか場に存在していない。
「会議招集の時間の事ですか。確かに誰も来ないようでは早かったと言えます」
『違う! 使徒がセントラル・ドグマへ侵入した事だ!」
「ああ、その事ですか。問題ありません。過去何度も侵入されていますが、その都度撃退しました」
『では碇、第11の使徒侵入の事実はある、と云うのだな?』
「はい。とてもヤバかったです」
ついさっきまで「誤報だ!」と言い張っていたゲンドウが、今は手のひらを返して使徒の侵入を認めている。
しかも先日来の「通信衛星の故障(犯人はサハクィエル)」に端を発した『間違い特別招集連続24時』の被害でストレスに苛まれた議員A〜Dが、ここに来てついにサボり。
キールのこめかみは血管が浮き出てピクピク腹立ちを表明している。
ゲンドウの顔も湯気を立てる美味しそうなお茶も、全てがむかついてむかついて、胃に穴が開きそうだ。
「しかしタイムスケジュールは死海文書の記述に近い感じで進んでいます。修正は可能です」
『……まあいい。今回の君の罪と責任は言及しない。だが! 君が新たなシナリオを作る必要は、ない』
「わかっております。全ては、ゼーレのシナリオ通りに」
ゲンドウは組んだ手の蔭でニヤリと笑う。
ずっと立ち聞きしていたシンジが、気になって口を開いた。
「父さん、ホカン委員会って何?」
「葛城ムーンのファンクラブの名前だ」
『違う!!』
「ほう、違いますか。ではシンジに説明してやってください。人類補完委員会の真の目的とは? ゼーレとは何か?」
『それは……』
言えない。言える訳が無い。その崇高な目的は国連にもナイショだってのに、手駒の一つネルフ所属の一パイロットに教えていい筈がない。
キールが口篭もっていると、ゲンドウは愉快そうに肩を振るわせた。
「やはり葛城ムーンの追っかけグループではありませんか」
『く……そうだ、我々は葛城ムーンに資金援助をしている有志の集まりだ……』
覚えていろ碇! この借りは二千倍にして返すからな!!
美少…女にまだまだ負けてないと思いたい…戦士
葛城ムーン
第14話
「天災少女はスパイなの?恐怖の潜入術」
……。
山。
洗濯物の山。時間をかけて洗うもの。
青い空。
うわの空。目に見えないもの。目が死んだ魚。
太陽。
徹夜のあと黄色いもの。
水。
気持ちのいい事。風呂上がりのビール。
花。
同じ物がいっぱい。食べられないからいらない。
空。
赤い、赤い空。
赤い色。赤いイロは嫌い。
流れる水。
血。
血の匂い。
血を流す男。赤い土から作られた人間。
血を流す女。白い石から産まれた人間。
男と女から作られた人間。
街。
人の作り出したモノ。
ネコ耳。
人の作り出したモノ。
人は何?
神様が作り出したもの?
人は人が作り出したもの?
私にあるものは命。
心。
心の容れもの。
幻の銀十字。
それは魂の、座。
これは誰?
これは私。
私は誰?
私は何?
私は誰?
私はナニ?
私はダレ?
私は、わたし。
この物体が自分。
自分を作っている形。
眼に見える私。
でも私がワタシでない感じ。
とてもヘン。
身体が溶けていく感じ。
自分がわからなくなる。
私の形が消えていく。
私でない人を感じる。
誰かいるの?
この先に……
……リョウちゃん?
この子知ってる、シンジ君。
リツコ。
シンジ君のお友達。
アスカ。
碇司令?
あなた、だれ?
あなた、だれ?
あなた、だれ?
寝てるのか?と思うほど目を閉じたまま静止していたミサトがクワッと目を開く。
それをモニタ越しに見てリツコは難しい顔をする。
「どう? ミサト。初めて乗った零号機は」
『うーん、なんか、レイのにおいがする感じ? よくわかんない』
第1回機体相互互換試験
被験者 葛城ミサト
まだ寝ぼけたように半眼の彼女は、戦闘服ではない方のプラグスーツ(全身を覆うぴっちりタイプ)を着ている。ただでさえ大きな胸の風船は、スーツのサポートでより巨大に見え、もはや妖怪である(アスカ談)。
「まさか、シンクロ出来るなんて予想外ね。14歳の子供しか乗れないと言う前提が崩れてしまったわ」
「パーソナルパターンも全然似てないのに不思議ですね。葛城さんとレイちゃん」
「シンジ君がすんなり乗れた例もあるし、零号機のキャパシティが特別広いと考えれば、ありえない事ではないけど……」
とは言え、この実験結果が知れれば関係各方面から「子供の人権」を嵩に着た無思慮な苦情があがるのは必然である。またトップシークレットが増えてしまったリツコは気が重い。
頭上の黒い耳もへたれるというものだ。
「誤差±0.03。ハーモニクスは正常です」
「葛城ムーンと零号機の互換性に問題点は検出されず。ではテスト終了。
―――ミサト、上がっていいわよ」
『ふぅ、やっと出られる〜。もう、この椅子狭くてやんなっちゃうわ。こっちのスーツは真空パックされたみたいでヘンな感じだし〜』
第1回機体相互互換試験
被験者 碇シンジ
―――どっくん。どっくん。動悸が。激しい。
シンジはガラスの向こう側で自分を観察しているお兄さんお姉さんたちの視線に舞いあがっていた。
「ロザリオのパーソナルデータは?」
「書き換えはすでに終了しています。現在再確認中」
「被験者は?」
「若干の緊張が見られますが、神経パターンに問題無し」
ライトがまぶしいくらいに少年を照らしだし、何台もの光学記録装置がレンズを彼に向けている。
ミサトから借りた銀色のロザリオを手に握りしめ、カチカチに固まっているシンジ。
「初めての変身、借り物の機体ですものね」
「バカね。そんなの気にせず、気楽にやればいいのに」
今日は暇なので見学のアスカには、たかが美少女(?)戦士に変身する実験くらいで、なんであんなに緊張できるのか分からない。
「それが出来ない子なのよ、シンジ君は」
「知ってるわ。だからバカなのよ。それと天然すけべ。」
そのバカを見にワザワザ、用も無いのにネルフ本部まで来ているアスカなのである。ミサト的には「だったら来なきゃいいのに。そんなにも暇なのね。たはは」と苦笑するしかない。
「それより、この機体相互換テスト、あたしはいいの?」
「どうせアスカは弐号機以外、乗る気ないでしょ」
「ま、そりゃそうだわ」
高速撮影用機材も準備が整ったらしく、リツコはカメラ位置、センサー位置の微調整を行う。
「―――始めるわよ、マヤ、プロテクト解除」
「えっ、先輩やってくださいよぉ。責任者の勤めを恥ずかしいからって人に押しつけるのは良くないと想います」
「くっ……言うようになったわね。これは命令よ、プロテクト解除なさい」
職権を振りかざすリツコを上目遣いで見上げながらマヤは小さく手を挙げる。
「じゃあ、ひとつお願いしてもいいですか? あの、私も1回『シンちゃん変身よ』って先輩みたいに言ってみたいんです。今日だけ取り替えっこしてくれませんか?」
「それが狙いね……いいわよ、交換くらい」
後輩の筋書き通りに動いてしまった自分を叱りつつ、頭に生えているヒトじゃないほうの耳を掴んだリツコ。だが、ぐいと引っ張るとその黒い三角は、少し伸びただけ。
手を離すと、ゴムのように縮んで元へと帰る。
「は……外れないわ」
「まぁったまたぁ!いつの間にそんなに気にいっちゃったの? あんなにイヤがってたクセに癖になっちゃったのね〜」
「違うわよ、誰が、こんな……嘘だと言うならミサト、あなた外して頂戴」
「え〜〜、折角リツコお気に入りなのに〜……お?
おお?
おおお!?」
ミサトが引っ張ってもウニョ〜んと伸びるだけ。
つむじを覗きこんでみると、なんとカチューシャの本体部分が消えている。彼女の頭皮から直接ネコ耳が出ているではないか。
どビックリしながら、ついつい目いっぱい引っ張ってしまう。
「痛い!痛いわ放して!」
「うわー……凄いわねそれ。完全にあんたの一部じゃない?」
哀れむようなセリフだが、ニヤニヤしながら言ってるのでからかってるようにしか聞こえない。もう一度自分の手で着け耳をひっぱりながら、溜め息をつくリツコ。
「……もう帽子無しでは外を歩けないわね」
「とれないんじゃ仕方ないですね。私のも外れなくなるのかな? ―――あ、まだ取れますよ先輩」
「もういいから、プロテクト解除して……」
かなりショックらしく、しおれた朝顔みたいな瞳で床を見つめている。
「はい。
―――シンジ、変身だ!っと。
銀十字封印解除、第1次接続開始」
「シンジく〜ん、準備いい〜? 『しるばーろざりおぱわー・めいくあっぷ』よー」
『は、はい。シ、シルバー、ロザリオパわあー……めーいく、あっ……ぷ……』
ぎゅっと目をつむったシンジはそろそろと右腕を上げて、ぼそぼそと呪文を唱えた。
その途端、ロザリオがまばゆい光を放った!!
シンジを中心として虹色の光があふれだし、周囲の壁・ガラスを幻想的な色合いに染めていく。
シンジの衣服が消滅し、あとに残った銀色の十字架から爆発的に放出された薄紅色の光の粒子が、リボンのように収束して彼の身体を覆っていく。
『あっ……く……ぅん…っ…!』
リボンが一枚肌に貼りついていく毎にシンジはびくっと身体を震わせて何かに耐えるように唇を噛む。
正体不明の強大なエナジーがシンジの身体を侵食しているのだ!
そして光の最後の一粒までもが同化したとき、シンジはプラグスーツ美少女戦士の麗しき衣装をまとっていた。しかし―――
「どう? シンジ君。変身した気分は」
「あのぅ……サイズが、合ってないんですけど……」
「あれま、ぶかぶか」
碇ムーンの華麗な活躍がスタートするかと思いきや、どうやらプラグスーツはミサトの身体サイズで具現化しているらしく、手袋の先端まで指が入っていない。余った指先がてろ〜んと折れている。ブーツもカポかぽ。ママの服を着たおこさまみたいになってしまっている。
「実戦には使えないわね……。他に何か気付いた事は無い?」
「他に? 他に、ほかには……えーと、ミサトさんの、においがするような気がします」
「えっ、うそっやーねもぉ」
「……なぁにがニオイよ、変態じゃないの」
照れるミサト。むかむかアスカ。我ら常人には想像も及ばぬ難しいコトをイロイロ考えているリツコ。
「とにかく、実験は失敗ね」
結局、取り替えっこ試験はまるごと無かった事になった。
暗い部屋。電気もつけずに詰め将棋を解いている冬月副司令。
ぱちん、と桂馬を指す音が無駄に広い執務室に響き渡る。
「予想外の委員欠席とお茶汲みの子供侵入。それに慌てた委員会議長の突き上げか……ただ文句を言うだけが仕事の、くだらない連中には、いいお灸だな」
冬月の声もエコーが乗っていい感じである。
「切り札は全てこちらが擁している。これだけ遊ばれても何も出来ない老人たちは、さぞや悔しいだろうな」
ずぞぞ……と茶をすすりながらゲンドウは答える。目線は手元の通販カタログに釘付け。パステルグリーンのエプロン(胸にひよこのアップリケつき)などを見ている。
「お前も少しは働け。行方不明のアダムは見つからない、初号機は動く気配もない、子供を呼び出して着せ替え人形にする、そんな事では解任されるぞ?」
「彼らには何もできんよ」
「だからといってじらす事もあるまい。今ゼーレが乗り出すと面倒だぞ。……いろいろとな」
「……全て、我々のシナリオどおりだ。問題無い」
パチン。銀を打って王を封じた。しかし二手多いので正解の筋道ではない。
駒を並べなおして、やりなおし。
「葛城三佐のシンクロ成功はどうなんだ? 俺のシナリオにはないぞあれは」
「支障は無い。新人を入れて、そちらに注目を集めれば誤魔化せる」
「5人揃うまでどれだけ時間がかかるんだ?」
ペラ。今度はレース多用系ロリータファッションのページを見ている。そしてレイが着ているところを想像してニヤリ。
「計画は2%も遅れていない」
パチン。
「では、ロンギヌスの槍は?」
「予定通りだ。作業はレイが行っている」
「レイが? 良くお前の言う事をレイが聞いたな」
「……赤木博士に頼んだ」
「だろうな」
「何がおかしい」
「いろいろとな」
―――南極から運んできた赤くて長い、先端が二股に分かれた棒っ切れを持って、零号機が暗い通路を歩いている。
ネルフの奥深くへ降りていく。
ズシン、ズシン……と重たい足音。
Pretty (soon 30) soldier Katsuragi moon
後編へつづく
2001/11/26 初版。
結局収まらずに分割した三笠どらに叱咤激励のメェルを。
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