Pretty (soon 30) soldier Katsuragi moon


 


 遠く遠く、空の彼方。
 高く高く、青の天井から。
 落ちる落ちる、白い星。

 冬の澄んだ空を一直線に天から地へと、流星が見えた。
 相田ケンスケは覗き込んでいた望遠鏡から顔を上げると、窓の外を見ながら目をこすった。

「おかしいなぁ、気のせいでなければ学校に落ちたように見えたぞ」

 それもかなり大きな物体だったような。
 たぶん夢か幻でも見たに違いないが、人間の形をしていたような。

 旅客機から人が落ちた? まさか。
 と思いつつ、ついテレビをつけてしまうケンスケ。うん、大丈夫。臨時ニュースは報じられていない。きっと見間違いだ。
 天気予報でも典型的な冬型の気圧配置だから今日は一日晴れだって言ってた。人間が降るって予報は無かった。

 さて人間ではないとすると、何と見間違えたのか気になってくる。
 もし人間ではないにせよ、なんらかの大きな固形物が衝突していたら学校のどこかが破損している可能性もある。今日は日曜だから学校には誰も居ないだろうし、もしこのまま無視して後に火災でも起きたりなんかしたら、あの時確認しておけばー、と後悔必至。

「よし。これくらい盛り上げれば空振りでもOKだろ」

 なんのこたぁない、最初から行くつもり満々だったケンスケはカメラや携帯テレビを保護クッション内蔵カバンに放り込み、オーバーコートを着込んだ。
 自転車を走らせる事数分、お馴染みの母校である第一中学校に到着。
 たまたま教師が来ていたりすると自転車が発見された時に「お前学校で何してたんだ」みたいな事になりそうなので、植え込みの影に停車。鍵はかけるがチェーンロックはやめておく。

 一応校舎の周りをぐるりと歩いて、人が居ないのを確認。それから校庭に出て、それらしい落下跡が無いか検証。
 残念ながら平穏無事で平らな土のグラウンドしかない。UFOの着陸跡とか見つかったら面白いのに。
 やっぱり空振りか、とガッカリ気分で肩をすくめたケンスケが、自転車までのんびり歩き始めたその時、裏門から別の赤い自転車が滑り込んできた。
 ライダーは同級生の霧島マナだった。

「あれ〜メガネ君、休みの日なのに勉学熱心だね〜♪ 補習?」
「いや、お前とは違うって。熱心でもなければ赤点取るほど寝不足でテスト受けたりしないよ」
「失敬な、私だって熱心でもなければ赤点なんて取らないよ? 寝不足でテストは受けるけど」
「ちゃんと寝ろよ」

 互いに顔を見合わせて苦笑い。

「それでその不真面目なメガネ君は、休みの学校に何か用事?」

 マナに問われて返す言葉が無いケンスケ。まさか流れ星を追いかけて来たとはメルヘン過ぎて言えやしない。
 そこで疑問返し。

「お前こそ何してんだこんなとこで」
「私は近道で通り抜けようと思っただけだよ〜。ここ通るとゲーパニまで2分早いのだ」

 ちなみにゲーパニとはゲームパニッシャーという名前の中古ゲーム屋である。

「そりゃ悪かったな引き止めて。もう1分のロスだ」
「うわっ、ホントだ。って別に急ぐ必要も無いんだけどね〜。予約してるし」
「また自動予約か」
「うん、自動予約。もうヒゲオちゃんとはツーカーの仲だもんね〜。……あれ? なんだあれ」

 マナが校舎を見上げている。
 視線の先をまっすぐ追うと、ちょうど屋上に向けられているのが分かる。

「誰か居る?」
「だ、誰だ? 用務員じゃないよな?」
「うん、違う。女の人みたい。お、メガネ君真剣だねぇ。さては君の目的はあそこの人でしょ〜」

 無駄に勘が鋭いから霧島は扱いづらいんだ、と愚痴りそうになる言葉を飲み込んで、ケンスケは頷いた。

「たぶんな。確信は無いけど。じゃ、俺見に行くからこれで」
「あ、待って、私も行く! メガネ君、セキュリティくぐって屋上まで行く道知らないでしょ?」
「お前、そんなことまで知ってんのか……」
「まぁ昔学校に住んでたからね〜♪」

 冗談とも本気ともつかないニヤリ笑いを見せたマナは、校舎の影に赤い自転車を止めると、ケンスケに手招きした。

「こっち。ちょっと雨どい登るけど平気だよね?」
「お前女にしとくの勿体無いよ」

 感心するケンスケに、マナはフフンと鼻で笑ってピースを見せた。


 


 葛城ミサトは肌を刺すような寒風に身震いして目覚めた。
 視界は一面真っ青。雲ひとつ無い青空。澄み切った空気は冷たい。
 身体の下にはコンクリートの硬さ。手触りもコンクリだ。

 上体を起こしつつ、赤いジャケットの前をジジジジーと閉める。
 寒さに自分の身体を抱きながら、くるりと周りを見渡すと、そこはビルの屋上のようだった。

 はてさてどこかで見たような。
 脳内のフォトアルバムと照合開始。ほどなく該当が見つかる。
 そうだ、シンジ君の学校だ。

 しかしこの違和感は何だろう? それは言うまでもなく寒いこと。
 常夏の第3新東京市に冬は来ない。それなのにこの空気は紛れも無く、15年ぶりに感じる冬の空だ。

 冷たいコンクリートに座り込んでいると体温が奪われていくので、とりあえず立ち上がる。
 街の様子をもっとよく見ようと、フェンスに歩み寄るミサト。
 たなびく髪を押さえながら見下ろした第3新東京市は、彼女の知るそれとは趣を異にしていた。

 まず兵装ビルが無い。
 道路に記されているはずの区画表示も無い。エヴァが出てくるエレベーターの黄色と黒の枠線も無い。
 街並みも、微妙に記憶に無い建物が増えていたり、逆に無くてはならない施設が消えているような気がする。

「単に学校に飛ばされたってワケじゃなさそうね……」

 目を細めてシリアスに呟くが、直後ブルルッと震えて身体をさすりながら後退する。冷たい空気が容赦なく身体から熱を奪っていくので。

「さむーー! なにこれ!?」

 誰にともなく訴えながら、とにかく室内に避難しようと思ったミサトが振り返った。
 するとそこに女の子が倒れているのに今更気付いた。
 駆け寄ってみると、予想通り黒髪のロングヘアで眼鏡を着用した中学生の山岸マユミだった。

 おーい、と呼びかけながら頬をぺちぺち叩いてみても反応が無い。
 抱き起こしてゆすってみるが、やっぱり気を失っているようでグッタリしていた。

「うーん、どうしよ」

 危険人物なので放置して遠くへ逃げる案と、とりあえずここに置いていくと風邪を引くから室内に運ぶ案が浮上。
 3秒くらい悩んで後者を選択したミサトは、いよっとマユミを肩に担ぎ上げて、室内へ降りるドアから校内に侵入した。

 階段を降りていく。どうやら学校の間取りはそのままらしい。これなら案内が無くても保健室の場所くらいは分かる。
 ミサトは肩に担いだ人間をカイロ代わりに暖を取りながら、誰も居ない廊下を歩いていった。

 今日はお休みだったっけ?と思った瞬間、背後から呼び止められる。

「ミサト先生!」
「は? 先生?」

 振り返った自分は相当間の抜けた顔をしていたに違いない。

「それにマユミン!? なんで!?」
「山岸は先週転校した……っていうこの俺の記憶は間違いか?」
「間違ってないと思うよ? ほら、なんか制服違うし」
「いやそれはここに来る前の学校のだろ。おじさんと一緒に海外に行ったんじゃなかったか?」
「あ、そっか」

 気の効いたアクションが思いつかず、マユミを背負ったまま難しい顔で立ち尽くすミサト。

「ミサト先生、どういうことなのか教えてくれますか?」
「先生、マユミンもしかして寝てる?」
「いや、あの……」

 どうしよう。
 3秒間、無言でケンスケとマナの顔を観察。好奇心の虫がとりついて瞳がキラキラしている若者を相手にするのは骨が折れそうな気がする。でもこの不可解な冬の世界で情報を得る手っ取り早い手段のような気もする。
 悩んだ挙句に脳がグチャグチャになってきたミサトは、毎度煮詰まった時の効果的な気分転換方法を選択した。

 くるりと180度方向を変える。

 そしてダッシュ。

「あっ、逃げたっ!」
「いや、あの方向は保健室だ。霧島、カギのある場所知ってるか?」
「ここ」

 ポケットからじゃらりと鍵束を出すマナ。

「なんで持ってんだよ!?」
「えーと、こんなこともあろうかと?」
「お前ほんとに昔住んでたんじゃないだろうなぁ」
「さあね〜? いいから追いかけよ。折角面白そうなネタが逃げちゃうよ〜」

 廊下を走る足音は三人分に増えた。それらは一様に保健室を目指す。




 




 2005/04/04

 うあん、ここまでしか書いてねえでした。

 で、この後なんだかんだあって、ミサトはここがパラレルワールドらしい状況証拠を得る。
 そして一時しのぎで先生の真似事をしたりする。
 マユミの家はこの世界では既に引っ越してしまって空き家になっており、行く場所が無いのでミサトと同居することになる。
 黒い本は行方不明。

 気が済むまで学園エヴァで平和を堪能してマユミとミサトが仲良くなったり、おやおや山岸さんシンジ君が気になるお年頃ですかぁ〜とミサトに勘付かれて赤くなったりしてください。

 そこらへんがいい感じに盛り上がったところで、不意に黒い本が自室の机に戻っている。
 黒い本はひとりでにバサバサとページがめくれ、「葛城ムーンを殺せばずっとこの世界に居られるぞ」とか「ほら台所に包丁があるぞ」とか血色の文字でマユミを恐れさせる。
 「むしろ殺さないと明日お前以外全員死ぬ」

 そいでもって学校でお腹が痛くなったら、2nd implessionの使徒が出てきて破壊活動を始めてさあ大変。
 変身できない葛城ムーンが弾き飛ばされて校舎に叩きつけられ、崩れた校舎の破片に直撃されたシンジとかがドクドク血を流す惨状を見て、マユミは自分が死ねば解決すると考えて使徒の前に出る。
 だが使徒が振り下ろした腕は、マユミを突き飛ばしたミサトを地面に叩きつける。

 トドメを刺さんと再度腕を振り上げる使徒。
 やめてと絶叫するマユミ。

 そこへ天から振ってきたS-DATが最大ボリュームで流したリツコの声。
 『――ミサトちゃん、変身よ――』

 使徒の腕の下で光が弾けた。



 ――で最終的に黒い穴からLCLまみれのミサトがどっこらしょとマユミを引きずって出てきて終了、とゆー話になる予定だったのである。







 
おわり 

 
2004/02/11 書きかけで挫折。
 2nd implessionやってねぇよのお怒りは三笠どらまで送ると「僕も」と斬られます。

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